ここ数年で一気に増えたFC(フランチャイズ)塾。その中でも個別指導の勢いはすさまじい。 現在、30社以上の企業で個別指導塾のFCを展開をしている。各社とも加盟者獲得に向け、商品やサービスはもとより、ビジネスモデルの差別化に入っている。変わりゆくFC塾、その中でも個別指導塾を徹底的に取材した。群雄割拠に入った個別指導塾FCを比較し、今後の動向とその先にある展望を迫った。
このように、各社ともそれぞれの思惑があり、当然戦略も戦術も違う。しかしながら、少子化と市場の寡占化がさらに進めば、FC塾市場も激戦から逃れられないことは間違いない。FC塾市場はビジネスモデルの変革期に入ったと言えるだろう。
最新の加盟モデルが巻き起こす加盟希望者の激しい争奪戦
主な個別指導FCの加盟にかかる、初期導入費用を一覧(表)にした。今や加盟に必要なコストは、完全に二極化したといえよう。大手老舗系は、多彩なパッケージや本部機能、そして、何よりもブランド力がある。その強みと引き換えに、どうしても開業資金は高くなりがちだ。この金額は個人起業家の誰もが手を出せる範疇を超えており、実際に大手は、力のあるオーナーによるFC内でのドミナント展開やM&Aによる企業買収をはじめ、法人からの加盟獲得にシフトしつつある。
そんな大手に対抗するのが、小資本で開業できるシステムを武器に参入した新興企業だ。とにかく、これらの企業は、随所で既存のFC本部とは対極のシステムを取る。加盟金は元より、FC本部にとっては聖域とも言えるロイヤリティの減額にも着手している。本部、教室のあらゆる部分でコストを削減し、ビジネスモデルの変革を遂げている。若い会社ゆえに、人件費や固定費が低く抑えられ、身軽な企業体質やITの進化が、急激にこのビジネスモデルを成長させたのだ。
しかし小資本のFC本部が台頭してくると、いくつかの問題が起こるとも考えられる。一つは加盟の敷居が低くなり、今まで以上に多種多様な加盟希望者が出てくることだ。必ずとは言えないが、教室展開スピードと加盟者の質は、トレードオフの関係にあると言ってもよかろう。誰もができると言っても、ある程度の資金と前職までに培った何らかのスキル、そして経営者としての力と、子どもの教育に対する志があって初めて、塾は成り立つ。残念ながら、全ての加盟希望者が、この前提をクリアしているとは言えないのが事実だろう。また、教室が増えれば、地域での競争が激化し、経営難に陥る教室が増えることだ。
これらの問題は、異業種FCで既に起きていることで、まさに塾でも同じことが起こりかねない。小さなFC本部には未知の可能性が秘められてはいるが、大手に比べると経営基盤が脆弱であり、急激な成長に本部機能の構築が追いつかないなど、危惧する点は多い。
そもそも塾に限らず、FCはビジネス的に熟成にはまだまだ程遠く、厳密には取り締まる専用の法律すらない。「法廷開示書」の義務付け、また、本部にとって有利なビジネス構造など、課題は山積みだ。しかし、日本経済が不況の昨今、過去の例から見ても、FC塾が世間から見て有望なビジネスと捉えられていることは間違いないようだ。
(図表は全て2011年1月末時点)
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2011.09.16
2011.10.07
株式会社経営教育研究所 代表取締役
教育ビジネスのアナリスト/コンサルタント。専門はフランチャイズ(FC)とデジタル関連。個別指導FCやベンチャーなどの教育機関を経て、2009年に民間教育シンクタンク経営教育研究所を設立。教育と異業種を結ぶエデュイノベーションLLPパートナー。