海外に住んでいると「義援金が集まったが、直接送りたいのに日本の送り先が分からない」と言われることがある。「日本人は義援金を喜んでいない」という話も出回っており、適切な情報発信が必要なのだが、海外へ被災地の実情を発信している市民団体は少ないのが実情だ。 [松田雅央,Business Media 誠]
筆者はドイツ在住の日本人ということで、ドイツ人から東日本大震災向け義援金の相談をよく受ける。加えて、両親が宮城県在住のため義援金送り先の情報に詳しいと思われるようだが、実際のところ特別なことを知っているわけではない。
身近な送り先として、まずドイツ赤十字社やユニセフといった組織を勧めるが、どうしても日本へ直接送りたいという声が強い。それならばと、日本の自治体が設けている義援金口座を紹介するのだが、「困っているところへ直に渡したい」と言われるから困ってしまう。
ドイツでも義援金の申し出は大変多いが、海外からのことゆえその気持ちを被災者へ届けるのは一苦労だ。送る側と受け取る側のミスマッチは、解消できないのだろうか。
被災写真を見て納得
震災が起きて、1カ月後のこと。知り合いの日本人音楽家2人がフランクフルト近郊の町の教会でチャリティーコンサートを開催した。音楽家がホームステイしているドイツ人家庭の助けもあり、地元教会組織のバックアップを得ることができた。
ただし条件が1つ。コンサート前に義援金の送り先をはっきり決めなければならないというのだ。もし信用できる団体が主催するチャリティーコンサートであれば「被災地の学校へ寄付」といった大まかな決め方でもいいのだろうが、個人開催であり、信用性の問題からあらかじめ詳細を決めたかったようだ。
ここ数年、義援金の送り先を吟味する市民の意識は強くなっている。2004年のスマトラ島沖地震の際も巨額の義援金が集まったが、義援金の詐欺や着服といった一部の心ない行為が発覚し市民を落胆させた。著名な国際組織なら信用性に問題はないが、今度は「組織の運営費や人件費が膨大なため、被災者の手に届く分はわずか」という実態が明らかになり、義援金を被災者へ直接渡したいという意識が強まった。このチャリティーコンサートでも「組織の手を経るのではなく直接に」というのが神父の意向であった。
さあ、それからが一苦労。コンサート直前になっても義援金の送り先が見つからない。音楽家の出身が栃木県だったこともあり、あまり報道されない栃木の被災地に送ろうということになったが、さてどこへ送ればいいものか。「センダイ」「フクシマ」といった名称は海外でも繰り返し報道されるため送り先として納得させやすいが、栃木に関する報道はほとんどないからその点の難しさもある。
結局、音楽家の知り合いから「栃木で伝統工芸の焼き物工房を開いている米国人がいる」という話を聞きそこへ連絡。相手方は「焼き物の釜が崩れてしまい、復旧資金のめどがつかないからありがたい」と涙ながらに喜んでくれた。
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