仕事は収入機会であるばかりでなく、成長機会、感動機会、触発機会、学習機会、貢献機会、財成機会でもある。仕事は機会(チャンス)の固まりである。その固まりを給料をもらいながら得られるのだから、なんとも会社は有難い。
少し厳しい言い方になりますが、いまの日本の子どもや若者はあまりに多くの人を見ていませんし、多くの人の生き方に触れていません。ですから、尊敬する人は?という問いに対して、頭が回らず誰も彼もが「両親」と紋切りに答えてしまうのだろうと思います。
私が大学生や若年社員向けの講義や研修で言うことは、「今一度、野口英世やヘレンケラーやガンジーなどの自伝や物語を読んでみなさい」です。もちろん、ここで言う野口英世やヘレンケラーなどは象徴的な人物をあげているだけで、古今東西、第一級の人物、スケールの大きな生き方をした人間、その世界の開拓者・変革者なら誰でもいいわけです。そうした偉人たちについて、改めて読んでみると、そこには新しい発見、啓発、刺激、思索の素がたくさん詰まっているはずです。
それら偉人たちの生き方・生き様に触れると、まず、自分の人生や思考がいかにちっぽけであるかに気がつきます。同時に、自分の恵まれた日常環境に有難さの念が湧き、「こんな生ぬるい自分じゃいけないぞ」というエネルギーが起こってきます。そして、具体的に「ああ、こんな生き方をしてみたいな」という模範的存在(専門用語では「ロールモデル」と言います)が自分の中に立ち現われてきます。
このロールモデルとの出会いが決定的に重要です。なぜなら、このロールモデルの生き方に刺激を受けて、その方向に行動を起こし、もがいていけば、だんだん道が見えてくるからです。そして同じような方向・同じような価値観で動いている人たちが周りに寄ってきて、彼らからもまた刺激を受けます。そうしてますます方向性と理想像がはっきりしてくる―――これが私の主張する「自分のやりたいこと・なりたいもの」が見えてくるプロセスです。
もちろん、ロールモデルは身近な職場で見つかるかもしれません。「いや、うちの会社ではそのような人物が探せないよ」という場合でも、図書館に行けば、私たちは時空を超えてさまざまな人と出会うことができます。ですから是非とも人との出会いには敏感に貪欲になってほしいと思います。ともかく、「何を、どう生きたか」というサンプルを多く見た人は、自分が「何を、どう生きるか」という発想が豊富に湧き、強い意志を持てるのです。
◆50歳になったとき「自分は何によって憶えられたいか」
いざ仕事を始めてみればわかりますが、本当にビジネス現場の時間はせわしなく流れていきます。日々の業務をこなすことに追われていると、1年、3年、5年、10年があっという間に消えてしまうものです。そんななかで、私が重要だと思うのは、漫然と日々を過ごさないということです。そのためにお勧めしたいのが「30年の計」を立てることです。
ピーター・ドラッカーの次の言葉を紹介しましょう―――
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。