大きな動きでみれば「第三次」となるのか、「秋の陣」ともいうべき緑茶飲料の戦いが激しさを増してきた。 各社の動きをみれば、「量少なめ、値段高め」の「プレミアム戦略」が主流のようだが、果たして市場に受け入れられるのか? 生活者視点を交えて各社の戦略を比較してみよう。
さて、世の中、全国的には京都の「福寿園」と「辻利」のブランドネームはどちらが上なのか分からないが、商品訴求の方法としては筆者はサントリーに歩があるように思う。
「伊右衛門(福寿園)」に対して「辻利」の名を直接もってきたインパクトは強い。
しかし、伊右衛門の原料と茶のいれ方に関する訴求は秀逸だ。
石臼びきと普通の茶葉、純水と山崎の天然水という、2種類の茶葉の形状と水の種類のブレンド、使い分け。
筆者は「さすが、“水と生きるサントリー”」と感じたがいかがだろうか。
しかし、JTとしても辻利は「育てるブランド」と位置付けているに違いない。今後の展開が楽しみだ。
後にも記すが、もう一つ同質化戦略をかけてきている銘柄がある。
現在、真田広之と京都芸子のTVCFで展開している「綾鷹・上煎茶」。
パッケージには「宇治茶舗上林春松本店」とあり、完全に先行二銘柄の持つ「京都」ワールドとの同質化をかけてきている。
綾鷹は後述する「プレミアム」の特徴の他、勝負のポイントとして、「濁り」に旨味があるとして、「振って飲む」というスタイルをTVCFでも訴求し、同質化するだけでなく差別化も図っている。
以上のように、この「京都対戦」の行方も勝負の見所だ。
■プレミアムのキーポイントは「量」と「価格」?
さて、この秋の第三次戦争の主戦場は、ちょつと割高な「プレミアム」だ。
参戦しているのは、伊藤園プレミアムおーいお茶(350ml・147円)、キリンビバレッジ生茶玉露100%(265ml・143円)、そして前出の日本コカ・コーラ綾鷹上煎茶(425ml・158円)である。
サントリーは伊右衛門で今までさんざん「上質な茶葉で丁寧にいれた」と言ってきた手前、今更プレミアムを出したら、「今までのは何だったんだ!」ということになる。
いわゆる、「理論の自縛化」によって参戦できない状態なのだろう。
アサヒ飲料は若武者は最も後塵を拝しているため、さらなるブレンド開発の余力がないということか。
では、プレミアム三銘柄を量と価格の観点で考えてみよう。
従来の緑茶飲用は500ml(150円)と350ml(120円)が標準である。
三銘柄の容量と価格は先に列挙した通りだが、各々、微妙に狙いが異なるようだ。
綾鷹は標準の500mlよりややスリムなボトルで8円高。
やはり500が標準と考えた場合、あまり量を減らさずに少しだけ高くしたという微妙なさじ加減ということか?
また、現在のペットボトル飲料の標準である500mlからあまりに少なくすると、前述の「京都ワールド」の同質化戦略との両面作戦が成立しなくなるという事情もあるのだろう。
しかし、150円を越えるという価格は筆者は少々心配だ。
150円を越えるラインには、味だけでなく、健康効果のある「特定保健用食品(特保)」がヘルシア緑茶をはじめ、味も飲みやすくなっている新商品がめじろ押しだ。価格が近くなれば強力な競合となり得る。
綾鷹は、従来の一(はじめ)と切り離した、多面性を持たせた戦略商品として上市しただけに、なかなかミッション・インポッシブルな戦いを強いられているようだ。
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2007.11.08
2007.12.04
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。