組織文化と組織風土は似通った概念で使われますが、よくよく考えるとかなりの差異があるように思います。前記事に続き、自律・他律・合律のコンセプトから考えます
なぜなら今回のような一件は、
組織文化が引き起こしたのではなく、
組織風土が引き起こした、いわば風土病の一種だからです。
「組織文化」と「組織風土」はよく似通った意味で使われますが、
本記事のここからは、これら両者の違いについて、私なりの解釈を書きたいと思います。
まず、両者の違いを図にまとめてみました。
文化と風土の違いは、実は英語表記で考えると明確です。
文化は“culture”、「手で耕す」という意味です。
風土は“climate”、これは「天候」の意味です。
つまり、文化は、耕すという意志的・肉体的な努力が必要なのに対し、
風土は、人間の努力のあるなしに関わらず、何かしらそこに漂い覆うものです。
また、文化は意志的であるがゆえに、
その中核には理念・哲学といった価値が必要で(たいていは組織の中心者が強く設定する)、
個々の構成員はそれに対し、共感・共振をもって積極的に受け入れようとする。
その結果、組織全体は、熱を帯び、動的に
ある種の方向性とスタイルを持って、外界の変化に対応しながら成長を志向する。
そこには、組織の中心者と個々の構成員が、
自律と他律をわきまえ、合律という第三の行き方をつくり出していこうとする動きが当然のごとく起こっている。
組織が持つこうした志向性・志向様式・帯熱を、私は「組織文化」と考えます。
他方、「組織風土」は、成り行きで形成されてしまうものです。
風土の形成には、組織の中核となる理念や哲学めいたものは必要ありません。
風土は、多分に雰囲気的で散漫としたものです。
その際、風土それ自体は、善でも悪でもない。
ただ、もし、その組織に“有利なご都合・既得権益”のようなものがある場合、
組織の中心者は、それを「我律」として張り、
構成員たちは消極的「他律」として、それを受け入れる(決して共感・共振はしていない)ときがあります。
こうした空気が組織を硬直的に覆って、
一種の重力として組織員の行動に歪みを生じさせ、習慣化したとき、
それは「風土病」となる。
私が、赤福の一件を、風土病と言ったのはこうした考えによるからです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
風土と文化は、きっちり明確に分けることはできませんし、
実際の企業は、風土面と文化面を混合して持っていることが現実の姿であろうと思います。
しかし、私も仕事でさまざまな事業組織をみてきましたが、
独自に明瞭で強い組織文化を持っているところは数少ない気がします。
組織文化を形成するためには、
1)基軸となる価値(理念/哲学)を据える
2)その価値に対して、個と全が共振して、熱を帯びる
3)その価値を具現化した志向性・志向様式を共有する
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【4景】合律的働き方と組織文化
2007.10.17
2007.10.10
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。