組織文化と組織風土は似通った概念で使われますが、よくよく考えるとかなりの差異があるように思います。前記事に続き、自律・他律・合律のコンセプトから考えます
【Envisioning Career-scape 第4景 -02】=======
「赤福」よ、おまえもか!
三重県出身の私にとっては、この一件、実にショックでした。
新興の成金ブランドならいざ知らず、
信頼しきっていた伝統の老舗ブランドなだけに。。。
しかし、考えてみるに、
老舗で、業界地位がゆるぎなく、オーナー家の経営であればあるほど、
こういった問題が起きやすくもあります。
つまり、
オーナー家の歴代経営者は、自らの律が支配的かつ成功的な状況が永く続くことで
いつしか自律の悪い面である「我律」(=俺様ルール)の上にあぐらをかいてしまいます。
「我律」はいつも、結果的に自己中心的な逸脱・暴走を招きます。
また、その下で働く従業員たちは、
何かおかしい、世間感覚とズレていると感じつつも
いつしか他律的に陥り、経営トップのやり方に従順になっていきます。
(おそらく、勇敢に意見する人もあったかもしれませんが、やむなく去っていったのだと思います)
真に強い組織、優れた組織というのは、
組織のトップも個々の構成員も、
自律と他律を超えて、「合律」という第三の行き方を常に意識的に止揚する組織であると
前回の記事で書かせていただきました。
その文脈で赤福の一件をとらえるならば、
株式会社赤福という事業組織において
オーナー家の経営者は、
自分の律をゆがんだ形で押し進め、社会の律(=他律)との間で“合律”を図らなかった。
また、関連する従業員も
いつしか事なかれ的に他律に流れてしまい、
製造者としての自らの良識や知恵(=自律)に照らし合わせて、
経営層との間で“合律”という創造的な行動をとらなくなっていた。
そうした状況が、次第に硬直した組織風土となり、
赤福という閉鎖的な空間の中で、
経営者や従業員に一種の重力となって作用していた。
そして問題は、世間ににじみ出た。
――――そのように私にはみえます。
こうした状況は、赤福に限ったことではなく、
最近問題となった、石屋製菓(「白い恋人」の製造元)にしてもミートホープ社にしても
同じような構図が見出せると思います。
文化は「手で耕すこと」
風土は「勝手に漂うもの」
甘党の私にとって、赤福という商品は大好きです。
(だから、この世からなくなると困ります。。。是非、立派な再出発を期待しています)
確かに、赤福という商品自体には、300年の歴史や文化があります。
しかし、だからといって、自動的に株式会社「赤福」という事業組織に、
それに釣り合う“組織文化”があるのでしょうか? ――――それには、疑問があります。
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【4景】合律的働き方と組織文化
2007.10.17
2007.10.10
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。