尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件、そしてロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問。日本は近隣諸国からの“圧力”を受け続けているが、なぜこうした問題が次々に起こるのだろうか。 [藤田正美,Business Media 誠]
2009年9月に民主党政権が成立してからというもの、日本にとってはほとんどいいことがなかったように思える。景気回復というよりデフレからの脱却はいっこうに進まない。政府の借金は増えるばかりで、財政健全化の道筋も見えない。達成したことと言えば、子ども手当を半額とはいえ実現したことと、高校の授業料が無償になったことぐらいだろうか。
あれだけ期待されて発足した鳩山政権は、普天間基地移設問題で“自爆”してしまった。そしてそれを引き継いだ菅政権は、消費税増税を口走って参院選で自滅。「強い経済、強い財政、強い社会保障」とか「雇用、雇用、雇用」といくら菅首相が力んでみせても、具体的な道筋が見えないから迫力に欠ける。さらにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加をぶち上げれば、野党はもちろん与党内からも反対の烽火が上がる始末(関連記事)。小沢元民主党代表の政治資金をめぐる問題では、小沢氏側からはねつけられて、党としては手も足も出ないようにさえ見える(もっとも、この問題では理という意味では小沢氏側の言い分のほうが納得できると思う)。
中ロが強硬な姿勢に変化
そこに降って湧いたのが近隣大国からの「圧力」だ。日本の領海で操業していた中国漁船を拿捕(だほ)し、乗組員を拘束したら、中国は異様ともいえる圧力を矢継ぎ早にかけてきた。さまざまな交流を中止。さらに中国が世界的にほぼ独占しているレアアースの輸出を「差し止め」、建設会社フジタの社員を軍事管理区域に無断で入ったとして拘束する始末。
その上ロシアは、メドベージェフ大統領が北方四島の1つ、国後島を訪問した。旧ソ連時代から現在まで北方四島を首脳が訪れたことはなかっただけに、ロシア大統領の国後訪問は日本にとって大ショックである。日本側の抗議に対しても、「ロシアの国内を大統領が移動しただけで何の問題もない」と木で鼻をくくったような対応である。さらに情けないのは、大統領が国後に行ったことを報道で知ったことだ。外務省もAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議開催前には行かないだろうと思い込んでいたからである。
中ロがより「強硬」な姿勢に変化したのは、いくつか理由があるだろう。1つはやはり普天間基地移設問題をめぐって日米の間がギクシャクしていることだ。鳩山前首相は「最低でも県外(移設)」と言い続け、挙げ句の果てに「沖縄に海兵隊が常駐することが安全保障上必要であることが分かった」として沖縄県内移設を決めた(というより、自民党政権時代の構想に戻った)。
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