Z会といえば大学受験のための通信教育の老舗。東大・京大合格者のうち、実に毎年そのほぼ半数がZ会出身者と、日本のトップ大学に関して驚異的な合格者占有率を誇る。圧倒的な実績を持つ通信添削システムは一体、どのようにして開発されたのだろうか。そしてなぜ、長年にわたって東大合格者の約半数もがZ会ユーザーなのだろう。同社四代目社長・加藤文夫様にZ会の秘密を教えていただいた。『インタビュー&構成 by竹林篤実』
何かできることはないのか。たとえ耳は聞こえなくとも、子どもたちに教える手段は何かないのか。「考え抜いた末にたどり着いたのが、文字だけでやりとりできる添削だったのです。ちょうど郵便制度が整備されていたことも藤井に味方しました」。
初めに思いありき。思いの強さ故に肉体的なハンディキャップを解消する手段を藤井氏は思いついたのだろう。「そんないきさつなのでそもそも通信添削を事業として立ち上げ、これで一儲けしようなどと藤井はまったく考えていませんでした。耳の聞こえない彼には、これしかない。五体不満足であるがために唯一残された選択肢が添削事業だったのです」。
経営者が抱えるハンディは当然、組織にとっても制約条件となる。たちまち問題となるのがトップである藤井氏と彼を支えるスタッフのコミュニケーションだ。耳が聞こえないトップにスタッフが何かを伝える手段は筆談しかない。何もかもを一々書いてとなればコミュニケーション量はどうしても限られてしまう。限定されたコミュニケーションで組織を回していこうと思えば、必然的に組織の規模を絞らざるを得ない。大勢の従業員を抱えて大規模な事業展開を行なうことははなから不可能だったのだ。
スタッフの数に制約があればお客様の数も限定せざるをえない。そこで藤井氏が狙いをつけたのが陸軍士官学校や海軍兵学校をめざす子どもたちだった。その理由は二つある。まず士官学校、兵学校といえば学力レベルで当時の最も優秀な子どもたちが集まる教育機関である。相手をできる数が限られているのなら、自分の勉強にもなるトップクラスの子どもたちと共に学びたいと藤井氏は考えた。さらにこうした学校では「給費」制度があり学費が免除される。同じ高等教育機関としては一高や三高もあったわけだが、ここに進むためにはそこそこの経済力が必要となる。そこで経済的に恵まれない子どもたちは士官学校や兵学校を目指す傾向があり、そうした子どもたちこそを応援したい気持ちが強かったのだ。士官学校や兵学校をめざす子どもたちのための通信教育機関としてスタートしたZ会はその後、なぜ通信教育で日本一のポジションにまで到達できたのだろうか。
(第一回 教えたい思いが生んだ添削システム/全四回 - 次回に続く )
第二回「限られたお客様に最高のサービスを」
http://www.insightnow.jp/article/626
第三回「一期一会の精神で子どもたちと接する」
http://www.insightnow.jp/article/663
第四回「教えたいがZ会のテーマ、これまでも、いつまでも」
http://www.insightnow.jp/article/681
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FMO第1弾【株式会社Z会】
2007.10.31
2007.10.24
2007.10.17
2007.10.10