多くの企業や医療機関などでは「職業性ストレス簡易調査票」に基づくストレス診断が運用されています。 また「うつ病診断」の労働安全衛生法への組み込みは一旦回避されたものの、この議論は、なんだか不思議な方向に向かっています。
ここで重要なことは、ハラスメント発生の温床を放置すれば、うつで社員一人が休業・退職した後も、次の発症者が生まれる可能性が高いということであり、ストレス診断で確認できた「被害者個人」にどれだけ手厚い対応をしても根本的な解消にはならないということです。
5.職業性ストレス簡易調査票
まずは、厚生労働省のWEBサイトにあります「職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくり」をご覧ください。
そして、ここからリンクが張られている東京医科大学の公衆衛生学のサイトに「職業性ストレス簡易調査票」が掲載されています。
http://www.tmu-ph.ac/topics/stress_table.php
ここでは、職業性ストレス簡易調査票とその使い方が公開されていますので、これらを活用して組織全体のストレス状況を把握するのも一つの対策となるものと思います。
また、集計作業などをシステム化したものとして、InsightNow!のビジョナリーの一人、川口氏の会社でも同様の診断システムを公表(有料)しています。
http://www.ini-p.co.jp/article/13740334.html
6.最後に
うつ病の緩和や復職のカウンセリングを行っていて感じることは、「仕事が忙しい」という状況だけでうつ状態になる方は少ないということでしょうか。
仕事が忙しいのに部下がいない。
厳密には、仕事の忙しさを上司が把握しておらず、部下が配属されない。
長時間労働が続く。
厳密には、上司の指示が不明確で無駄な作業が多く、業務効率化の提案も受け入れられず、ただ指示に従っているのに、残業代が支払われないので失望する。
同僚と心理的な距離がある。
厳密には、おしゃべりをするよりも目の前にある作業を的確にこなしているだけなのに、周囲の雰囲気と合っていないと言われて苛められる。仕事を追加される。
等々、思いあたることが沢山あるはずなのです。
少なくとも、そのような現場を見られない会社経営者の側からすれば、会社のためにならない小さな動きが会社業務の効率化を遅らせ、また「労災(うつ病等)」発症に遠からず結びついているという事実があります。
重要なことは、会社は因果関係を明確にして、原因を改めるために情報が必要であるということ。そして、うつ状態にある社員がいるということは、組織運営上のどこかで「無駄なこと」が行われている可能性が高いということなのです。
今後、国の意向や制度であれ、早期の会社組織体制の改善でれ、労働問題での訴訟対策であれ、どのような背景でもいいのですが、会社として「ストレス診断」を導入しなければならないとお考えであれば、それは会社側は何らかの改善義務を負って、会社の状態を把握するための様々な手段を講じていかなければならないということになります。
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人的リスクマネジメント
2010.09.09
2008.12.15