「できる人ほど仕事が集中する」―――これは組織における仕事分布の法則である。そしてできる人・頑張る人ほどカラダを壊す。そんな中、組織には能天気に雇われ続ける人もいたりする。なら、いっそ能力や向上意欲などないほうがシアワセなのかもしれない……そんなことを考えてみる。
この問いは、J・S・ミルが投げかけたあの有名な言葉; 「満足した豚よりも不満足な人間、満足した愚か者よりも不満足なソクラテスであるべきだ」を思い出させる。
私たちは組織で働いていると、しばしば次のような法則を目にする。それは―――「仕事ができる人ほど仕事は集中する」。仕事ができてしまう人は、仕事量の増加とともに、目標も常に上へ上へと移動している。だから、常に目標と現実の自分とのレベルギャップにプレッシャーやストレスが付いて回る。そしてカラダを壊すこともときに起こる。
自分が“仕事ができる組”に入ってしまうと、「仕事を叱られないレベルでやり過ごし、無難に雇われ続けている人間はいいなー」と思えてくる。いっそ自分に能力とか、向上意欲とか、責任感とか、野心とかがなく、“仕事をそこそこやり過ごし組”になれたらなー、むしろシアワセなのになーと思う。そのように不満足な「high aimer」は、満足した「low aimer」をみて、ときどきうらやましくなる。
その一方、満足した「low aimer」は、不満足な「high aimer」を見て、何をあんなにしゃかりきに頑張ってばかりいるんだろ、といった不思議な面持ちで彼らを眺める。
余談だが、あの働き者生物の代名詞である蟻(アリ)の世界にも、「怠け蟻」というのがいて、集団の何割かは働かない蟻が占めるそうだ。
さて、幸福感は実に多面的で語ることが難しいのだが、ここで私の考えたことを5つにまとめる。
□1:リスクを負った努力は中長期できちんと報われる
人生は1回限りの勝負ではない。長い間の勝負の連続である。プロ野球なら1試合は9イニングあり、年間では144試合ある。相撲なら1場所15番あり、年間では6場所ある。人生やキャリアは、もっともっと長く多くの勝負の積み重なりで形成されてゆく。
Bさんはその日たまたま頂上に行けなかった(=負けた)。確かにその1回の勝負は負けだったかもしれない。しかし、たぶんBさんは翌日か、次の機会かもしれないが、その山の頂上に必ず立つだろう。Bさんはそうやって自分なりに勝ちを積み重ねる人だ。そういう“心の習慣”を持った人は、中長期的にきちんと幸福を得る。どういった幸福かといえば、自らの成長を楽しみ、多少の障害などにへこたれない強い心身を持つ、という幸福だ。
「high aimer」というのは、high aimであるがゆえに不満足に陥るのが宿命である。しかし、「高いところに矢印を向けている」その心の習慣こそが、最終的には人生の高台に自らを導くことになる(と私は信じたい)。
次のページ□2:意味が満たされていれば幸福である
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。