「高品質なら高価格で売れる」という従来の常識が通用しない無料経済(フリー)が、インターネットを支配している。有料で売れない理由は、「価格が高いか安いか判断が付かない」と消費者を迷わせる心理的負担にある。仮想アイテムに、心理的ハードルを越えて買ってもらえる価格を付けるにはどうしたらいいだろうか。Zyngaの『Caf? World』や『Treasure Isle』から、その方法を学ぶ。 [野島美保,Business Media 誠]
数時間もすれば、来客数を現状で最大にする方法が分かり、最初の課題は解けてしまった。一通りゲームの楽しみ方が分かってきたところで、有料アイテム購入も視野に入る中級段階になる。
この段階でのキーワードは「制限からの解放」である。手詰まり感や限界を感じさせるものが出現する。いくら頑張っても、小さな店舗のままではやれることに限りがある。現状での作りこみが限界に達した時、自分の店を広げたいと思うのは自然な欲求だろう。
この時、有料化されるのは、ゴージャスなインテリアとともに、店舗の増床という制限解放機能である。『Café World』では、友人を招待(インバイト)して増やすか、有料アイテムを購入することで、店舗増床の恩恵を受けることができる。後に追加された、合成アイテム生成などのクエストも、友人数を増やすか有料アイテムを買わないとできない仕組みだ。当初は簡略化されたゲームだと感じたが、こうした中上級者向けの内容が随時追加され、数カ月経ってみるとかなり奥行きのあるゲームに進化していた。
プレイの限界が、友人招待か有料アイテムによって突破できる仕様は、ソーシャルゲームによく見られる設計である。
Zyngaの宝探しゲーム『Treasure Isle』(月間アクティブユーザー1679万8986人、8月13日時点)では、宝探しの場所について限定が加わる。これを解消するには、友人を増やすか、有料アイテムを購入しなければならない。もちろん、ここでゲームが中断されるわけではなく、別のマップが追加されていくのだが、キーロックがかかった地図が毎回表示されることになる。有料にしないとゲームを続けられない作りにするのではなく、キーロックという限界を演出するのである。
▲『Treasure Isle』、友人を増やすか、有料アイテムを購入すると宝探しできる場所が増える(右)
無料でたっぷり遊ばせて、ゲームを続けたいと思わせた上で、それを引き止める限界を演出する。単純に考えると、ボトルネックになる邪魔ポイントに、ゲーム進行上に欠かせない重要アイテムを配置し、そのまま有料化すればよいことになる。しかしこれを直接的にやりすぎると、ユーザーの逃げ場をなくし、かえって離反を増やしてしまう。有料でしかプレイ続行できないなら、そこでゲームをやめるか有料アイテムを買うかという大きな選択を、ユーザーに迫ることになるからだ。大きな選択は、ユーザーの心理的取引コストを高くすることになる。
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