再生可能エネルギーの主力として注目されている風力発電。陸地だけではなく海上でも建設が行われているが、さまざまな問題が浮き彫りになってきている。 [松田雅央,Business Media 誠]
石炭火力発電所では1メガワット時の電力を得るのにおよそ1トンのCO2を排出するから、これと比較するとアルファ・ベントスは年間22万8000トンのCO2削減効果がある。
ドイツ政府が掲げる目標「2030年までに2万5000メガワットの洋上発電」を達成するためには、アルファ・ベントスと同規模の風車を5000 本建設しなければならない。これが実現すると年間発電量は95テラワット時となり、国内電力需要のおよそ15%をまかなえる計算だ。
風力はエコロジカルでエコノミカル?
風力エネルギーはエコロジカルである。火力発電などと比較すればこの定義は正しいのだが、風車の数が5000本となれば話はまた別だ。
事業者側は環境安全性を強調する。すでにデンマークで稼働している洋上ウィンドファームのデータを基に、洋上を飛ぶ渡り鳥が風車に衝突する可能性は低く、風車の騒音・低周波音の影響についても問題がないという。
確かに北海ではすでに多くの洋上ウィンドファームが稼働している。しかしながら、さらに数千・数万単位で建設された場合、周辺の自然環境にどのような影響を及ぼすかは全くの未知数だ。
風力発電の経済性はどうか。現在、洋上でも陸上でも風力発電は火力・原子力・水力発電に比べて割高であり、再生可能エネルギー法による売電保証がなければ経済的に成り立たない。アルファ・ベントスの場合、売電保証価格は1キロワット時=0.091ユーロに設定されている。割高な分は電力消費価格に広く薄く転嫁され、2011年に5カ所の洋上ウィンドファームが稼働するようになれば国民1人当り年間0.10ユーロ程度の負担増ということになる。
風車の数が少なかった時代はこれで問題なかった。「再生可能エネルギーの開発を促進する」という国家目標が十分な説得力を持っていたからだ。
しかし1つの事業者が数百の大型風車を建てることになれば、これも話が違ってくる。大型洋上ウィンドファームは売電価格の保証により巨額の収益をかなり確実に見込める事業であり、当然「事業者をもうけさせるために国民負担が増えるのはおかしい」という声が上がる。この点に関しては今後議論が活発化するはずだ。
再生可能エネルギーの代表格である風力もまた黎明期から成熟期に入った。エコロジーとエコノミーの両面から、システムの大幅な見直しが必要な時代に突入している。
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