部課長の対話力〈2〉~上司は「客観的でいること」に逃げるな

2010.08.10

組織・人材

部課長の対話力〈2〉~上司は「客観的でいること」に逃げるな

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

部課長が客観性に留まって指示・命令・評価しているだけでは部下は動かない。部下は上司とのやりとりで、「正論」より「熱のある話」を聞きたがっている。「評価」より「自分の存在意義」を求めている。「データ」より「意味・やりがい」に耳を傾ける。

 では、どうすれば対話がかみ合い共創回路に入りやすくなるのか。―――それには「共有目的」(Common Purpose)を設定することが必要です。

 会社という全体組織にしろ、部課という小単位の組織にしろ、それはいろいろな背景をもち、いろいろな考えや性格をもった人びとが、たまたま居合わせるようになったモザイク的な集団です。そんな人びとの集団の中で、雑談を超え、会議を超え、命令を超え、対話が起きるためには目的が欠かせません。同じ目的を見晴らし、その目的実現のために組織はどうあるべきか、各人は何をすべきかと考えるとき、対話は起こりやすくなります。つまり、図4のように、上司も部下も互いの文脈の中に、共有する目的を置ければいいわけです。

 ここでさらに重要なことを言います。―――「目的」とは何でしょうか?

 目的は「目標」とは違います。図4において、「共有目的」の箇所を「共有目標」と置き換えてはいけないのです。共有目標の下には対話は起きません。下手をすると分裂すら起きます。
 目的と目標の違いは、端的には「目的=目標+意味」によって表わされます。つまり、目標とは単純に目指すべき方向や状態を言います。目的はそこに意味や意義が付加されたものです。
 目標はある種、冷徹なもので、定量・定性的に表わされ、ひたすらそれを達成することが求められます。ですから、上司と部下が「共有目標」を間に置いてコミュニケーションをするとどうなるか?―――両者の関心は、もっぱらそれを達成する手段や方法論に偏り、最終的にはその目標が「できる・できない」について神経を尖らせ合うという結果を招きがちです。そこにはもちろん対話は生まれません。最悪の場合、「給料をもらいたんなら、つべこべ言わず目標をクリアしろ!」と、上司が一喝して終わりということにもなりかねません。
 一方、上司と部下が「共有目的」を間に置いてコミュニケーションをするとどうなるか。―――両者の関心は「なぜ、我々はこの目標を成し遂げる必要があるのか?」「我が社・我が部が行う事業の意義は何なのか? その意義に照らし合わせてみて、現状の目標が適切なのか?」「この目標を達成することは自分自身のキャリアにとってどんな意味があるのか?」といった観点になる。そこには、意味創出のための対話が必然的に起こってきます。
 共有目的とは、分かち合える理念やビジョンと言い換えてもいいでしょう。いずれにしても、このことを部下とともに語らおうとすれば、部課長はしっかりとした「観」を自身の中に打ち立てておく必要があります。なぜなら、目的は意味論・価値論をベースに語られるものだからです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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