書いても本にならない……ゴーストライターという仕事の現実

2010.06.28

経営・マネジメント

書いても本にならない……ゴーストライターという仕事の現実

ITmedia ビジネスオンライン
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ある編集者によると「ビジネス書の9割はゴーストライターが書いている」という。これまで彼らの原稿料や出版界の特殊な事情などに触れてきたが、今回は現役編集者からのタレコミをもとに、出版界の闇に迫った。 [吉田典史,Business Media 誠]

 編集者によると、この経営者の会社が当初、「本ができ上がったときには5000部の買い取りをする」と明言したようだ。「買い取り」とは、会社などが本を出したとき、それを一斉に購入することを意味する。中堅出版社の役員クラスからすると、これだけの数の本を買ってくれる経営者は、大スポンサーである。トラブルメーカーであろうとも、ゴーストライターを使い、本を出したいと思ったのだろう。

 ここから、一段と根深い問題になっていく。今度は、本の発売が中止になったことを聞いたライターが言い始めた。「原稿料を早急に払って欲しい」。だが、編集者は払うことができない。そもそも、この本は失敗に終わったのだから。急いで、上司である役員に相談すると、「20~30万円でいいだろう」と言った。

 ライターは、その額では納得しない。そして「50~60万円を支払うように」と内容証明を会社に送りつけた。私の見解だが、通常、ゴーストライターの1冊の相場(中小出版社)はこのくらいである。その意味で、この数字は説得力がある。

 ところが、役員らは「20~30万円以上は支払えない」と突っぱねた。役員は担当編集者であるこの男性に「仕切れていない」となじり、ほかのプロジェクトから外すなどして辞めるように仕向けたようだ。彼はそのことに怒りを感じ、私にタレ込んだというわけだ。この出版社に出入りするほかのライターからも、この話は聞かされた。ここまで状況が悪化していると、胸が苦しくなる。

 ちなみに著者であった経営者は、ほおかむりをしているようだ。秘書たちも出版社にコンタクトをしてこなくなった。泣きを見るのは、立場の弱いゴーストライターと、権限もない若い編集者である。関係者は、こういう現実をどのような思いで見ているのだろうか。

※関連リンク
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ブログ「吉田典史の編集部
Twitterアカウント:@katigumi

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