茶の間からサッカー日本代表の決定力不足を指摘することは簡単だ。しかし、このことは日本人全体に投げかけられる「創造的逸脱力の弱さ」問題なのだ。
しかし、私のように個人で独立して新規に事業を始めると、そうはいかない。自分の一挙手一投足が、即、事業に影響する。下手をやっても後からの重ね修正はできないし、組織が守ってくれるわけでもない。私にとっては、一回一回の研修プログラム、一度一度のコンサルティング、一冊一冊の著作、一片一片の記事が勝負作品になる。そこで評価されないと、次はない。五年後にきちんと事業を安定化できているのか、それはわからない。一年後、この商売を無事続けていられるかさえもわからない(無計画に事業・キャリアを進めているというわけではなく)。
しかし、常に一瞬先の未知で白紙の空間に、自分の信ずるところのサービスを打ちつけていく―――それしか仕事がない。そういった意味で、いまの自分のキャリアは「ジャズ・書」的である。自身がそういう状況にあるからこそ、余計にジャズ音楽に惹かれ、エヴァンスの文面に過剰に反応してしまうのだとも思う。
再びエヴァンスの文章を引用すると……
“Group improvisation is a further challenge. Aside from the weighty technical problem of collective coherent thinking, there is the very human, even social need for sympathy from all members to bend for the common result. This most difficult problem, I think, is beautifully met and solved on this recording.”
「グループ・インプロヴィゼーションは更なる難問である。全体における重要な技術的な問題とは別に、全メンバーが共通の結果を目指すべく心を一つにしなければならないという、非常に人間的で社会的ですらある必要性がある。この最も難しい問題は、思うに、この作品においては非常に美しく対応され、解決されている」。
一人のアーティストの即興創作ですら容易ではないのにそれが複数のアーティストの協働となると難度が増すことは明らかだ。このアルバムに限って言えば、「いやぁ、参加アーティストがマイルスにエヴァンス、そしてコルトレーンにキャノンボール・アダレイでしょ、そりゃいいものが出来るに決まってる」と思われるかもしれない。しかし、そういった超一級のタレントが集まったときほど簡単にまとまるものではない。
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。