5月28日からiPadアプリで提供されている、プレステージ化粧品CLINIQUE の電子雑誌『Smile』。『Smile』を読んで、既存の雑誌やWebの表現とはまったく違うメディア体験に驚いた筆者。“iPad後”の世界はどのように変わっていくのか考えてみた。 [郷好文,Business Media 誠]
クリエイティブの変化、それはiPadのコンテンツ表現の衝撃だ。ブランドイメージを優先する化粧品業界では、これまで画像サイズや表現力の点で劣るWeb媒体への広告出稿が少なかった。そのためか、Yahoo! BEAUTYが展開するWebマガジン『LuAu(ルアウ)』は、化粧品企業向けの広告営業という狙いも見える。だが、このiPadでのプロモーションでは、『CLINIQUE』側が積極的に「やりたい」と発案してきた。大企業も変化をつかんでいる。
「そこで、私たちは藤本やすし氏に『雑誌のクリエイティブやアートディレクションをもう一度創り直しませんか?』と提案したのです」と太田社長。藤本やすし氏はこれまで、『GQ』『VOGUE』『BRUTUS』『流行通信』など、日本を代表するファッション雑誌やルイ・ヴィトンなど著名企業広告を手がけてきた。必ずしもWeb派ではないと言われる藤本氏を口説けた背景には、太田さんの熱意だけではなくiPadの表現力があった。
広告も番組もシームレスに
2つ目は企業メディアの変化。業界用語では“Owned Media”と言う、自社Webサイトやブランドサイトなど企業が直接所有するメディアが変わるという。
「iPadなどのスレート端末によって、企業メディアは文字や音声、画像や動画をマルチメディアで伝えるものへと根本から変わります」と太田さん。
依然、会社案内や商品案内などカタログサイトが多い企業Webサイト、iPadはそこに革新をもたらす。“iPadのWebサイト”は、従来のフレーム構造やバナー、重いフラッシュ画面などから自由になり、Webは動くキャンバスになる。
3つ目はカスタマイズだ。ビルコムが制作した『情熱の系譜』(テレビ東京)と連動するiPadアプリ『情熱の系譜 for iPad』は、iPad専用コンテンツをテレビ番組と並行させて配信する(Apple側の審査終了次第、近日公開予定)。
情熱の系譜 ipad アプリ 登場
テレビ番組を見ながら、iPadコンテンツを読む。片岡鶴太郎氏の絵の秘密をさらに掘り下げる。番組を提供する協和発酵キリンのメッセージも自然体で伝わる。「なるほど!」と思えばiPadからTwitterでつぶやく。「iPadアプリは広告なのか? それともテレビプログラムの1つなのか?」、それは視聴者が決めればいい。
楽しみ方は自由自在。いずれ、個人向け広告はもちろん、個人向け番組コンテンツも配信できるかもしれない。これからの“視聴者参加型メディア”とは、Webサイトなどの企業メディアと、ブログやTwitterなどの社会メディア、そして広告メディアの合体だ。iPadがその真ん中にある。
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