改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりとものを言う知事たちだ。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせてくれる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業にたとえるなら経営者である。さまざまな抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となるだろう。知事の改革を紹介するシリーズ、今回は、佐賀で改革を断行する古川知事である。
■権限は現場に移すべし
「話が決まった後は、もうコテンパンでした(笑)。予算を絞るのがお前の仕事じゃないか、それが余計な買い物をしてどうすんだって。でも、赤韋威鎧はそのあと間もなく国宝に指定されました。私が現場にいたからこそできた仕事だと誇りに思っています」
まさに事件は現場で起こるのだ。もし話が持ちかけられたとき、岡山県の財政課長が別の人物だったらどうなっていたか。歴史に『if』を考えても意味はないのかもしれない。しかし、この一件で現場の判断の重要さを身を以て理解した古川氏は、その学びを自らの県政で活かしている。
「ところで県庁内で異動希望を出してもらうと、圧倒的に人気を集めるのが観光課です。どうしてだか、わかりますか」
何となく浮かれた気分になるから、などという不真面目な理由ではない。真相はまったく逆、職員はもっと仕事をしたいのだ。
「観光課なら法律で縛られることが少ないからです。自分で考えて、自分で動ける。自由にやってもらうと、皆さんとても良い仕事をされる。霞ヶ関から出向している人たちもそうです。県庁に来ているときには、すばらしい仕事をされる。ところが、霞ヶ関に戻ると、どうもくすんでしまう」
組織の難しいところなのかもしれない。組織を組織たらしめるのは決まり事である。組織が大きくなればなるほど、決まり事も微に入り細を穿つようになる。せっかくの個人の意気込みもルールの網に絡め取られてしまい、勢いを失ってしまうのだ。
「県庁に入ってくる人たちは、難関を突破してくるわけですから、みんな優秀な人たちばかりなのです。個人として優れた能力を持っているのに、組織に入ったがために光を失うとしたら、それは明らかに組織の問題でしょう。知事になってまず取り組んだのが、この問題を解消することでした」
組織風土を変えるためには、思いきった荒療治が必要。と思いきや、古川知事は、実に意外なやり方で佐賀県庁に変化をもたらす。それもコストも時間もかけずにだ。知事のとった秘策とは、どのようなものだったのだろうか。
⇒次回「時間も、コストもかけずにできるからこそ改革」へ続く(全四回)
『佐賀県 関連リンク』
佐賀県HP:http://www.pref.saga.lg.jp/web/
古川康のパワフルコム:http://www.power-full.com/
有明佐賀空港:http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kuko/index.html
佐賀県職員採用試験情報HP:http://www.pref.saga.lg.jp/web/jinji.html
◇インタビュー:竹林篤実/坂口健治 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:安住 羊助 ◇撮影協力:アンジュウ写真館
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佐賀県知事・古川康氏
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