「能」を磨き、「観」をつくり、「志」を抱き、「人」と交わっていくこと。この4要素の循環をうまく起こすことが、たくましくキャリアを展開させていくための要諦である。
また、同じ方向の想いや価値観を持っている「人」たちとの人脈交流も重要である。そうした人たちと社内外で出会い、結びつきあうことで、さまざまに触発を受け、「観」や「志」がいっそう深く固まってくるからだ。情熱は伝染するものであるし、人は人によってしか感化されないものである。
このように能・観・志・人の要素は相互に影響しあっている。この4要素の循環を起こすことで、キャリアは力強く展開を始める。
◆能・観・志・人=幹・根・陽・水
4要素を樹木にたとえてみると、
・能=幹、枝葉
・観=根
・志=陽の光
・人=水
さらに言えば、
・仕事舞台(担当プロジェクト、雇用組織、業界、社会)=大地
・仕事上の成果=花、木の実
・自分のキャリア=樹木の姿
能・観・志・人の4要素はどれも大切ではあるが、その中でも私はやはり「観」が一番肝心だと思っている。
「観」が強ければ、環境をたくましく活かしていける自己ができあがり「強いキャリア」を展開していくことができる。逆に、「観」が弱ければ、環境に翻弄されがちな自己となり「弱いキャリア」しか歩めない。
強いキャリアとは、納得の仕事の連続、泰然自若の職業人生である。
弱いキャリアとは、妥協の仕事の連続、付和雷同の職業人生である。
いずれにしても、多忙という圧力によって働かされている私たちは、職業人として「なぜ働くのか?」、「この多忙はどこかにつながっているのか?」、「自分はこの仕事を通して何を世に提供したいのか?」と言う自問を常に投げかける必要がある。
自分にある程度答えを持っている人は、すでに根っこ(=観)ができているので、キャリアという樹木はちゃんと大きくなっていくだろう。もし、まだ答えを持ち合わせていないようであれば、樹木の生長にはいったん限界がくるかもしれない。それどころか、危うくすると枯らしてしまうことも起きかねない(心身の病の危機はいつもそこにある)。
◆人に会え・立志伝を読め
「観」をどうやって醸成すればよいかという方法論に関しては、万人に効く統一のハウツーやマニュアルのようなものはない。自分でもがきながら徐々に固めていくものだからだ。何事も“No pain, no gain. No challenge, no progress. ”である。
しかし、その醸成を促すきっかけを他からもらうことは可能である。仕事・キャリアに行き詰ったら、私が勧めることは2つ。
1)「想い」を持った人にどんどん会うこと。
2)偉人伝、立志伝を読むこと。
次のページロールモデルは何も身の回りの生きた人物でなくともよい。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。