改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりとものを言う知事たちだ。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせてくれる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業にたとえるなら経営者である。さまざまな抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となるだろう。知事の改革を紹介するシリーズ、今回は、佐賀で改革を断行する古川知事である。
「ところが一概にそうはいえません。人口だけでなく佐賀県は面積も決して大きい方ではありません。しかし、もし私が岩手県や北海道の知事を任されていたら、途方に暮れていたかもしれませんよ(笑)。自治省時代にお世話になった長野県にしても北の端から南の端まで行こうと思えば、一日仕事でしたから」
コンパクトであるということは、きめ細かく地域の隅々まで目が行き届くメリットを生むわけだ。とはいえやはり人口が多ければ発言力も強くなるのが、物事の道理である。6倍強の人口を抱える隣県の存在感は大きいのではないだろうか。
「確かに同じ土俵で同じ議論をしていては、福岡にリードされるリスクは避けられないかもしれない。そこで意識しているのは、常に時代に先駆けた動きをすることです。まだ誰もやっていないことをいちはやく実行する。大きな渦に巻き込まれるのではなく、渦そのものを自分たちで創り出すことが大切なのです。その意味ではコンパクトさはむしろ武器になります」
孫子の兵法である。大きな相手に対して、真っ向から勝負を挑むのではなく、小回りの良さを効かせて、先に先にと動いていく。相手に動かされるのではなく、つねにイニシアティブをとり自分が相手を動かす方に回る。先を読む思考があればこそ、いちはやく道州制の理想的なあり方についての提言も古川知事はまとめていた。
「もっとも、現実的には民主党政権の中で道州制の議論を本格化させていくことは難しいでしょう。ただし民主党は、これまで地方主権、地方分権を主張してこられた政党であり、国づくりについての基本的な方向性については、私を含めて知事会のメンバーと共有できています。その意味では今後に、非常に期待しています」
知事はいま、総務省の顧問を務めている。その総務省の大臣は、佐賀県選出の原口議員である。しかも原口大臣は、野党時代の民主党でネクスト総務大臣を任命されていた。
「総務省人脈も活かして、地域主権が一歩や二歩レベルではなく、十歩も二十歩も進むようにプッシュしていくつもりです。大切なのは、いつも現場。これだけは絶対に間違いのないことですから」
古川知事が強調する現場へのこだわりは、自治省キャリア時代のあるエピソードによって、不動のものとなったという。そのエピソードとは何だったのだろうか。
⇒次回「事件はいつも、現場で起こっている」へ続く(全四回)
『佐賀県 関連リンク』
佐賀県HP:http://www.pref.saga.lg.jp/web/
「古川康のパワフルコム」(http://www.power-full.com/)
有明佐賀空港:http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kuko/index.html
◇インタビュー:竹林篤実/坂口健治 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:安住 羊助 ◇撮影協力:アンジュウ写真館
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佐賀県知事・古川康氏
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