わずか4人のチームで、開発期間もたったの4ヶ月。世界初のケータイ用DL型フルブラウザ『jig(ジグ)ブラウザ』は福井で開発された。各社がしのぎを削るブラウザ争いの中でもjigブラウザは、価格や使い勝手で圧倒的な強みを持つ。あえて福井での開発にこだわる創業者の思いは何だろうか。
最終回 「エンドユーザーと向き合うための三度目の起業」
■新しいモノを作りたい、なのに作れない
「会社が回り始めると、またもや自分のやりたいことをできなくなったんです」
新会社の成長プロセスとしては、できるだけ早くいくつかの事業を立ち上げ、その横展開が考えられていた。といってすべてを自社で抱え込むのではない。UNI研究所はあくまでも新事業開発に特化し、立ち上がった事業の展開は他社に任せるつもりだったのだ。
「僕自身はとにかくソフト開発に専念したい。ところが携帯用のソフトを作って、それを展開していくプロセスで問題が起こったのです。早い話が携帯ソフトを扱える開発者が、世の中にはまだほとんどいなかった」
結局、開発したソフトのアジャストからバリエーション展開までをUNI研究所自体で引き受けることになった。福野氏にかかる負担は増すばかり、本来向き合いたいエンドユーザーとの距離も一向に縮まらない。
「経営的には安定したんですが、やりたいことをやれてないなあとか、本当なら自分がやれるはずのことを出来てないなあとか。そんな思いがどんどん募っていったんですね」
そんなとき、あるベンチャーキャピタリストから一本の電話が飛び込んでくる。株式会社jig.jpで社外取締役を務めるその電話の主は、弱冠二十歳過ぎにもかかわらず、ドコモ四国のiアプリコンテストで審査員を務めた福野氏を見て、ピンと来るものがあったという。
「何だかよくわからないままお会いして、たまげました。彼がいきなりビジネスプランのプレゼンを始めたんですから」
福野氏がベンチャーキャピタリストに、ではなく、ベンチャーキャピタリストが福野氏にである。いうまでもなくキャピタリストは通常ならプレゼンを受ける立場である。真逆を行く彼の行動は強いインパクトを与えた。
「僕は正直なところ技術はわかるけれど、経営やマーケティングが苦手。彼の話を聞けば、そこは自分がやるから、僕には技術をやって欲しいとおっしゃる。今度こそ、うまくいくかもしれない、期待がふくらみました」
直ちにUNI研究所を事業譲渡して、新たに株式会社jig.jpを立ち上げる。24歳にして3度目の起業も拠点(本社自体は東京です)は鯖江に置かれた。
■いきなり始まったパケ定をチャンスに
「jig.jpを立ち上げた途端にパケット定額制がスタートしました。いよいよ本番到来って感じ、わくわくしましたね」
通信費を安く収めるブラウザが売り物の福野氏にとって、パケット定額制の開始は逆風となるはず。ところが福野氏の視点は、もう一段上のレベルにあったのだ。
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FMO第33弾【株式会社jig.jp】
2010.05.06
2010.04.30
2010.04.22
2010.04.16