わずか4人のチームで、開発期間もたったの4ヶ月。世界初のケータイ用DL型フルブラウザ『jig(ジグ)ブラウザ』は福井で開発された。各社がしのぎを削るブラウザ争いの中でもjigブラウザは、価格や使い勝手で圧倒的な強みを持つ。あえて福井での開発にこだわる創業者の思いは何だろうか。
「開発キットはすごい勢いでダウンロードされました。あっと言う間に数万レベルです」
ダウンロードが一段落すると、次はメールが殺到した。サポート依頼や技術的な問い合わせである。しかも、その半数は英語、開発キットは海外の技術者からも注目を集めていたのだ。
「世界中から注目された理由は、iアプリが世の中に初めて公開された携帯電話のJavaだったからでしょう。だから僕が作った開発キットも同じく、世界初の勝手Java携帯エミュレーターということになりますね」
続々と届くメールを見ていた福野氏は、あるアイデアをひらめいた。こんなにも多くの開発者が興味を持つなら、iアプリのコミュニティを立ち上げればどうなるのか。
「みんなでソフトを作って、みんなで勉強して、みんなでより新しいモノを作る。そんな理想的な環境ができるだろうし、うまくいけば開発者の支援事業そのものがビジネスになるんじゃないかと思ったのです。何しろ携帯は、みんなが持ち運べるコンピュータなんですよ。開発者ならきっとみんな、いろいろやりたいことがあるはずだって」
ところが思惑通りには開発者が集まらなかった。確かに開発キットはすごい勢いでダウンロードされたが、開発者コミュニティを作っていろいろやりたいという福野氏の思いが、うまく伝わらなかったのだ。
「理由はもう一つあって、プログラマー達は携帯電話があまり好きじゃなかったんですよ。なぜなら、当時はパケット代がすごく高かったんです。だから何か開発しようと思えば、とんでもなく高額のパケット代を覚悟しなければならない」
ここにヒントがあった。せっかく作った開発キットで、自分は何を作ろうかと考えて思いついたのが、携帯用ブラウザだ。
「テーマははっきりしていて、とにかくパケット代を安く抑えるブラウザです。プログラムをうまく組めば、通信コストは必ず抑えられると思っていましたから」
ただし、当時のiアプリに割り当てられていた容量は、わずかに10キロバイト。ちょっとテキストを書いても、すぐに容量オーバーとなるミニマムサイズにプログラムを抑えなければならない。
「逆にいえば、難しいテーマだからこそやりがいがある、みたいな(笑)。最終的には何とか作り上げて発表したら、大手のプロバイダーさんから早速引き合いがあって採用となりました。これで会社は軌道に乗りましたが、またもや予期せぬ展開になっていくんです」
福野氏を襲った予期せぬ展開とは、何だったのだろうか?
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FMO第33弾【株式会社jig.jp】
2010.05.06
2010.04.30
2010.04.22
2010.04.16