私たちは果たして、衣食足りて「働く」を知るようになったのか? “小さな飢え”を超えて、“大きな渇き”に対する答えを求めるためのキーワードを挙げる。
●【ハードの報酬/ソフトの報酬】
仕事の報酬にはいろいろとある。
私はそれを2つの考え方でとらえている。
それが「ハードの報酬」と「ソフトの報酬」だ。
ハードの報酬とは、目に見えやすい報酬のことで、
・給料や賞与など金銭的なもの
・昇進や昇格など職位・名誉的なもの である。
ソフトの報酬とは、目に見えにくい報酬で
・その仕事成就によって習得できた能力や経験知、充実感、自信
・その仕事成就によって得た人脈や信頼関係
・その仕事成就によって受け取った顧客からの感謝の気持ち
・以上の報酬を土台として手にする次のもっと大きな仕事機会
私たちは、もっとソフトの報酬の重要さを語るべきだ。
なぜなら、ソフトの報酬を受け取り、それを再度いろいろに組み合わせることで、
次のもっと大きな仕事機会を手にすることができ、
そこでまた、ハード/ソフトの報酬を獲得し、
そしてまたそのうちのソフトの報酬をいろいろに組み合わせ、
次のもっと大きな仕事機会を得て……
というように、自分と機会が拡大再生産する回路がつくられるからだ。
私たちは、ハードの報酬、特に金銭的報酬に躍起になる。
もちろん、いたずらに安働きする必要はないので、
もらえるものはもらっていいのだが、カネは1回きりものだ。
カネで次のもっと大きな仕事機会が買えるわけではない。
「年収○○%アップの転職!」という文字がWEB上に踊る。
私は研修で、血の気のはやる若い世代の人たちに次の2点を言っている。
・今の仕事・組織が与えてくれている「目に見えない報酬」をよーく見つめ直すこと
・人材紹介会社は転職斡旋をビジネスとしてやっていること
また会社や上司も「若い連中がすぐにやめていく」と嘆く前に、
自社・自部署が、どれだけのソフト的な報酬、つまり
「成長報酬」、「意味報酬」、「機会報酬」を提供できているか、
それを彼らに堂々と語れるようでないとだめだ。
●【共通善;common good】
私は「共通善」という言葉を、意外にも、経営書で目にした。
それは『美徳の経営』野中郁次郎著・紺野登著(NTT出版)である。
この本のまえがきで、著者は
経営はすでに質の時代に入っていて、
新たな時代に求められる経営の資質は「共通善を志向する卓越性の追求」だとしている。
企業の事業目的にせよ、個人の「働きがい」にせよ、
利己に100%閉じてしまうことはいろいろな意味で危うい。
ある部分、利他に開いたほうが最終的にはうまくいく(いくものであってほしい)。
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【働くことの意味論・価値論】
2010.04.11
2010.04.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。