私たちは果たして、衣食足りて「働く」を知るようになったのか? “小さな飢え”を超えて、“大きな渇き”に対する答えを求めるためのキーワードを挙げる。
私たち働き手も同様に、自らの仕事生活に「クオリティ」という目線を入れるべきだ。
QWLを維持する・高めるために、何かを犠牲にする、我慢することは当然ある。
しかし、トータルでみて、生活・人生の質がどう変わるか、
これが大事な判断になる。
●【ディーセントワーク;Decent Work】
これはILO(国際労働機関)のスローガンにもなった言葉である。
直訳すれば、「まともな仕事」とか「人間らしい仕事」になる。
つまり、全世界を見渡すと、まだまだ
「まともな仕事」「人間らしい仕事」でない労働が蔓延しているのが現状であって、
だからこそILOは、これをスローガンに掲げなければならなかった。
いずれにせよ、“decent”(名詞形は:decency)という単語の中には、
人間としての尊厳や誇り、品位、輝きのようなものを含んでいる。
先ほどのQWLにしても、このディーセントワークにしても、
ややネガティブゾーンからの脱却として使われる言葉なのだが、
私はより積極的な意味合いとして使われることを願っている。
働く個人が、それぞれに 「自分にとっての“decency”」を最大化する。
そして組織や経営者は、
その働く個人の“decency”を最大化するような働かせ方をする。
●【サステイナブル;持続可能な】
「サステイナブル(sustainable)」とは、最近では地球環境問題を語る際によく出てくる。
もちろん地球の存続は大事だが、その前に、
「このままのペースで働くあなたが、いつまで持ちこたえられますか?」
―――と私は尋ねたい。
そう、「サステイナブル」の観念が必要なのは、あなた自身の人生なのだ。
20代はいろいろとカラダやアタマに無理がきく。
しかし、自分なりの目的観ややりがいを持たずに残業の日々を送っている生活は
30代か40代に必ず大きな健康障害を引き起こす。…「必ず」!
いったん倒れてしまうと、そこからの職場復帰、そして定年までの再疾走は
とても辛いものになる。
さらには、50や60で定年退職したとしても、その後の人生はまだまだ続く。
(これからの時代、定年は明るいゴールではないかもしれない)
いまのビジネス社会の働き方・働かせ方の問題は、
短距離競走を、繰り返し繰り返しやっていることである。
キャリア・人生は短距離競走ではなく、マラソンである。
(マラソンよりトレッキングと言ってもいいかもしれない)
自分なりの表現で、完走できることが、ほんとうの勝利といえる。
だから留意すべきは、「サステイナブル」なのだ。
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【働くことの意味論・価値論】
2010.04.11
2010.04.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。