私たちは果たして、衣食足りて「働く」を知るようになったのか? “小さな飢え”を超えて、“大きな渇き”に対する答えを求めるためのキーワードを挙げる。
・生活の糧を稼ぐ「収入機会」であるばかりでなく、
・自分の可能性を開いてくれる「成長機会」であり、
・何かを成し遂げることによって味わう「感動機会」であり、
・さまざまな人と出会える「触発機会」であり、
・学校では教われないことを身につける「学習機会」であり、
・あわよくば一攫千金を手にすることもある「財成機会」だからです。
◇ ◇ ◇
私たち労働者は(宿命的に)意識に上げる優先項目として、次のTOP2がある。
1)「労働条件」
(いかに多くの給料を得られるか、いかに好ましい環境で働けるか)
2)「仕事術」
(いかに効率的に仕事を処理する技術を身につけるか)
私たちは、 「いかに」(HOW)ということばかりに頭とカラダが占領されていて、
ついぞ「何がやりたいのか」(WHAT)や
「なぜそれをやるのか」(WHY)を掘り起こす時間をもたない。
「働く目的・働きがい」を求める内面の声は、
「生キテイクタメニハ ショウガナイダロ」というもうひとつの声にいとも簡単に押し殺されてしまう。
そんな中で、
人類古来からの大きな自問;「人はパンのみに生きるのか?」
という内側の問題に入っていくきっかけとして、
「モチベーション」という言葉が職場に普及してくるというのはひとつのよい流れである
―――このことは前回の記事で述べたとおりである。
私たちは、「働くこと」をもっともっと意味の側面から、価値の側面から、質の側面から
語り合う必要がある。
それは自分たちを、働くことに苦しむネガティブゾーンから引き上げるために、
そして同時に、働くことを楽しむポジティブゾーンでおおいに躍動するために、
必要である。
そこで、以下に、私たちが「モチベーション」と同様、
「働くこと」を意味・価値・質のレベルで語るために
日頃から意識の棚に上げた方がよいと思われる言葉や概念をいくつか挙げる。
●【QWL;クオリティ・オブ・ワーキングライフ】
これを「労働生活の質」と直訳してしまうと、
ニュアンスの冷めたものになってしまうのだが、
QWLとは要は、
「人間らしい仕事生活の質」とはどんなものか?
「自分らしい職業人生のあり方」とはどんなものか?
「自分が納得できる働き様」とはどんなものか?
―――といったことを自分に問うものである。
私たちの「働くこと」が、量に支配され続ける中で、
質を考えることは当然のことなのだが、意外とできないことなのだ。
ちなみに、この言葉は「QOL」 (クオリティ・オブ・ライフ)から派生している。
QOLは医療現場で使われ始めた。
例えば、
ガンなどの末期治療で、延命を目的に身体がボロボロになるまで薬剤投与を受けることが普通になっているが、
むしろそれは自分の理想にそぐわない、自分の尊厳がおびやかされる、
あるいは社会が人間らしい存続と思わない状態にしてしまうことがしばしば起こる。
これを「QOL」の低下と表現する。
患者によっては、「QOL」の維持を優先して、最小限度の治療に留め、
余命を限りなく有意義に送るという選択をするケースも増えている。
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【働くことの意味論・価値論】
2010.04.11
2010.04.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。