「モチベーション」はますます一般語として普及しつつある。モチベーションを考えることは、「働くこと」の問題を意味論・価値論へシフトさせるよい流れである。
つまり、大昔のキツい労働現場であっても、
「3人のレンガ積みの訓話」が示す通り、食うためにレンガを積んでいる人間ばかりではなく、
大聖堂(あるいはピラミッドだって)建築のために働くという人間は少なからずいただろう。
また、一人の人間の中で、パンを得るため、後世に残る仕事に貢献したいから、
という働く理由は複雑な模様を描いて心の中で混合している。
つまり、モチベーション1.0も2.0も3.0も、
歴史上いつも同時進行だったし、
かつ、一人の人間の中でいつも同居しているのだ。
とはいえ、最終的に著者の主張したいこと、時代が向かうべき方向性に関しては、
私は大いに賛同する。
これからのすべての働く人間に重要な3つのことは
―――「自律性・卓越性・大目的」だ。
健全なモチベーションはこの3要素によって湧いてくるし、
それをベースに働いている個人・組織は、
ますますこれらを補強する善循環がはじまる。
「モチベーション」という概念が普及し、
モチベーション喚起の重点を内発的なところにシフトしていこうとする意識が普及することは、いい流れである。
「働くこと」の問題が、本格的な、意味論・価値論に入っていくためには、
こうした概念が社会の下地に敷かれることが不可欠である。
次回は「QWL(Quality of Working Life)」「ディーセントワーク(Decent Work)」など
働くこと・仕事生活の「クオリティ」について触れます。
【補足考】
●ピンク氏の『DRiVE』のセミナービデオはこちら:
●ピンク氏はモチベーションを「内発的/外発的」という軸だけで切り取ったが、
私はそれに加えて「利己的(自分に閉じる)動機/利他的(他者に開く動機)」も
見逃してはいけないと思っている。
→参考記事はこちら
●内発的動機の理解を深めるために:
心理学者チクセントミハイの「フロー」理論
→参考記事はこちら
●動機・行動心理に関する理論書はさまざまあるが、その中でよいと思うのは:
『仕事と人間性-動機づけ・衛生理論の新展開-』
フレデリック・ハ-ズバ-グ著、北野利信訳
(東洋経済新報社)
●また、リンクアンドモチベーション社は
モチベーションをエンジニアリングし、商用サービス化するという試みをしている。
『モチベーションエンジニアリング経営』
小笹芳央著、勝呂彰著
(東洋経済新報社)
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【働くことの意味論・価値論】
2010.04.11
2010.04.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。