コミュニケーションの指導をしていると伝えると、よく人から「お前は何いってるのかわからない」といわれるのですがどうしたら良いですか?という質問を10人中3人くらいから言われます。コミュニケーションはディベートでも雄弁術でもありません。コミュニケーションに苦手意識を持つ人こそ、ゴール意識をもっていないのです。
・ゴール
そもそもコミュニケーションとは、「上手な話し方」のことではありません。相手があって成り立つものがコミュニケーションです。相手とどう接するか、相手をどうしたいのかというゴール設定により、当然伝え方も変わって来ます。「よく人から『お前は何言ってるのかわからない』と言われるんですがどうしたら良いですか?」という質問から、そのゴールは全く見えません。これが問題です。
コミュニケーション能力を高めたいということで恐らくこのような相談をされるのだと思います。しかしそもそも「何のために」コミュニケートするのでしょう。ゴール設定を抜きにコミュニケーションを考えることが間違っています。スポーツのルールもわからず技術を磨いても全く意味はありません。ルールにのっとって、勝敗・強弱・何らかの結果を達成するのがスポーツです。コミュニケーションもまた全く同じこと。
コミュニケーションに自信がないという方に限って、漫然とコミュニケーションをしがちです。意味無く友人や家族といった、結果を求められないオシャベリにおいて何も考えないのは普通です。しかしコミュニケーション能力を高めたい場合、「漫然と」ということはあり得ません。ゴールを考え、それを設定し、意識してコミュニケーションを進めるという構造を持たなければならないのです。
・なぜ面接の台本作りは意味がないのか
私のところに面接の練習に来るのは、就活学生だけでなく転職を考えるベテラン社会人の方もいます。マジメな人にありがちなのは面接の想定問答を作り、その答えを丸暗記するという行為です。しかし面接でセリフを練習してきても意味はありません。面接官にセリフを覚えてきたことは丸わかりだからです。
ではなぜ丸暗記は意味がないのでしょう。面接というコミュニケーションのゴールが「上手に会話がができる」ことではないからなのです。職務によるとはいえ、ほとんどすべての職務・採用においてコミュニケーション能力は重視されます。しかしそれは上手いシャベリ能力ではなく、組織の中でコミュニケーションを介し、事業目標を達成できることにつながる能力を見きわめているのです。
シャベリに自信のない人が台本を用意し、それを暗記して臨む方が、緊張で何もしゃべれないよりましに思えるかも知れません。確かに面接で一言もしゃべれないで採用は無理でしょう。しかし台本丸暗記のセリフを言えたからと言って採用も、やはり同じくありません。むしろそんな上がりやすい人は、緊張でセリフを忘れる可能性が高く、そんな状態になればますます言葉は一言も話せなくなることでしょう。現実的リスク管理上も、台本は全くお勧めできません。
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2016.04.26
2016.08.31
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。