マリオシリーズや『Wii Fit』などで世界的な支持を獲得している任天堂の宮本茂氏。ゲームデザイナーとしての30年間の業績が評価され、第13回文化庁メディア芸術祭では功労賞が贈られた。受賞者シンポジウムでは、エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏が聞き役となり、宮本氏が自身のゲーム設計哲学を語った。 [堀内彰宏,Business Media 誠]
マリオとゼルダばかりを20年近く続けていると、「いつまでもマリオしかやらないんですか」と周りから言われるので、「たまには違うキャラクターも作りたいな」ということで始めたのが『ピクミン』(2001年)です。「どうせキャラクターを作るなら、女子高生に受けたいな」と思って作りました(笑)。
狙い通り結構受けたのですが、一番受けたのはCM用に作った音楽(『愛のうた~ピクミンのテーマ』)だと思います。その音楽がすごくかわいいので非常に評価されて、それで海外も売ろうと思ったのですが、「何か意味分かんない」という反応でした。フランス語にもして(『VOS MEILLEURS AMIS - SONG OF LOVE』)、情緒があってすごくいいのですが、フランス人も「分からない」と言いますね。海外では「すごいモンスターがアリを食べるぞ」みたいなゲームととらえられています。
僕は3Dゲームを作りながら、「映像を見るんじゃなくて、映像に触るんだ」というテーマを『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の時に決めていました。僕はアニメや漫画をやりたかったので『ゼルダの伝説 風のタクト』(2002年)は、「アニメの映像にも触りたい」ということで作りました。『マリオカート ダブルダッシュ!!』(2003年)はシリーズもので、新しいハードになると新作を出して2~3年経っても売れ続けるというものです。
面白いのは僕らだけと違うかな
宮本 このあたりまでが3Dゲームになった第2世代と思っているのですが、ここから僕はすごく変わります。マリオカートシリーズなどを作るとお客さんも喜んでくれるのですが、「面白いのは僕らだけと違うかな」と思ったのです。任天堂にはマリオクラブというデバッグをするところがあって、そこでデバッグをしている人たちにアンケートをとると、「ここを直したほうがいい」などと言ってくれます。しかし、そこで「パーフェクトだ」と言われても、「ゲームを遊ぶということが前提になっている人にとっては面白くても、ゲームを遊ばない人にとってはちっとも面白くないのではないか」と考え始めたのです。
僕はチームの中で「世の中には“よくできたゲーム”と“面白いゲーム”がある」と言っています。僕らは自分たちのノウハウを突っ込めば、よくできたゲームはいつでもどんなものでも作れる。しかし、「それがお客さんにとって面白いゲームであるという保証は全然ない」ということです。だから、例えば『週刊ファミ通』のクロスレビューでゲーム評価がすごく高かったのに売れないものがあるとすると、ゲーム業界の中で生きていると「どうして?」と思うわけです。「評価が高ければ売れるんでしょ」と思っているので。社内でも「人よりよくできたゲームを作れば評価される」と思っている。
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宮本茂氏の設計哲学
2010.03.08
2010.03.01