鳩山首相の施政方針演説があったのは先月末である。「命を、守りたい」と始まったその演説には、賛否両論あるのだが・・・。個人的には、次のフレーズが耳から離れない。その点について、強く異議ありである。
プロップ・ステーションの本部は東灘区の六甲アイランドにあり、私の家も震災で全焼し、仲間も全員被災者になってしまった。普通は何か困ったこと が生じた場合、役所に相談に行くというのがほとんどであるが、その市役所・区役所も被災し電車も不通になるなど、みんなが被災者になってしまったのであ る。そのような状況でどのようにして助け合い励ましあって復興していけばいいのかという課題に直面していたときに在米のプロップ・ステーションの支援者か ら「チャレンジド」という言葉を教えてもらった。「チャレンジャー」ならば「挑戦者」だけど「チャレンジド」というのは「チャレンジ」の受動態で、「(神から)『挑戦』という使命や課題、チャンスや資格を与えられた人」という意味であり、さらに日本で言う「障害者」だけを意味するだけではなく、震災復興に立ち向かう人もこの範疇に入るという。つまり「チャレンジド」という言葉のなかには「すべての人間には自分の課題に向き合う力が備わっている」、だから課題が大きいときにはその向き合う力もたくさん与えられるという哲学がこめられているという。その言葉に私はとても勇気づけられた。
以来私たちは「障害者」のことを「チャレンジド」と呼ぶようになり、「チャレンジドを納税者に出来る日本」というキャッチフレーズもそこから生まれてきたのである。
ただ、誤解のないようにしておきたいのは、決して「障害者」は差別用語だから使うな、「チャレンジド」を使えということではない。 「チャレンジド」という言葉の持っている意味と考え方、それを少しでも広めていきたい、あるいは私たち自身がチャレンジドだといえるような生き方をしたい、ということなのである。
※プロップ・ステーションホームページより抜粋
福祉の現場や障害のある方々が、障害者って呼ばれるのが嫌だから「チャンレンジド」って呼んでくださいなんて一言もない。「マイナスをプラスに転換するための表層的な言葉」ではなく、本当に頑張っている人達のための言葉であり、頑張っている人達を本当に支援したいと願っている人達の中で流通する「プラスにプラスを付加するための意志ある言葉」である。
その考え方に乗って、「障害のある方々」のすべてを「チャレンジド」呼びましょうと提唱する政治家の考え方は、あまりに考えが稚拙で、配慮にかける・・・。
障害を持った方々が、「これは自分に与えられた使命」なのだと思えるようになるまでの葛藤や困難をどれだけ想像しているのか。そういう強い人達は、自分のことを「チャレンジド」なんて、のほほんと暮らしている健常者に呼ばれたくないはずだ。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。