人に勧めたい良書はたくさんあるが、人に勧めたいテレビ番組となるととたんに数がなくなる。そんな中で私が推すのはこの番組だ。「セルフ・エスティーム」、ゲーテの言葉などとともに紹介する。
―――それは、食にうるさい客が多いから。
このことはメディアのコンテンツも全く同じことだ。
テレビ番組や出版物の内容は、
受け手・買い手のレベルに合わせて変化していく。
かの文豪ゲーテは、
「文学は、人間が堕落する度合いだけ堕落する」と喝破している。
『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のような地味で滋味な良質番組が続く下地には
それを能動的に観ようとする視聴者が、ある一定数アメリカにはいるということである。
日本ではそこまでの数がいるかどうか…
日本で成立するとすれば、
インタビュイーに流行りの芸能人を迎え、
インタビュアーは女性アナウンサーか誰か、
聴衆は物見興味で来る人びと の番組。
それは、決して示唆と思索に満ちた公開インタビュー番組にはならず、
ノリと笑いで流れていく公開トーク番組となる。
(たとえ感動秘話が披露されたとしても、どこか陳腐な演出感が抜けきらない)
いや、まぁ、私はそんな番組も嫌いではないし、
番組作りの技巧面では素晴らしい発想力を日本のテレビ界は持ち合わせている。
しかし、やはり「大人の番組」をつくることは苦手なのだ。
(日本のマスカルチャーは“幼稚さ”を特徴とするという指摘もどこかでなされていた)
いずれにしても、
『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のような大人な番組が
日本でもある一定数で支持され、ちょこちょことつくられればいいなと思う。
それはテレビ側・製作者側の問題ではなく、
私たち視聴者一人一人の求める力だろうし、
一人一人がセルフ・エスティームを強く高めようとする意志だろうと思う。
【関連リンク】
○「アクターズ・スタジオ・インタビュー」NHK番組サイト
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。