『アクターズ・スタジオ・インタビュー』を良質な啓発材とする

2010.02.15

仕事術

『アクターズ・スタジオ・インタビュー』を良質な啓発材とする

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人に勧めたい良書はたくさんあるが、人に勧めたいテレビ番組となるととたんに数がなくなる。そんな中で私が推すのはこの番組だ。「セルフ・エスティーム」、ゲーテの言葉などとともに紹介する。

セルフ・エスティームは「自尊心」と訳されるが、実際のニュアンスはもっと複雑である。
(心理学の世界では「自己肯定感」とする考えもある)
(自己中心的に我を張るという態度とは異なる。それはselfishという別語がある)

私の感じ取るセルフ・エスティームは、
・自分、そして自分の生き方を肯定的に受け入れ
・自分を堂々と外に開き出し(押し出すのではなく)
・自分の「佇まい」をどっしりと据え
・自らの人生に対し、自分自身が最大限に納得し、自信がもてるようにする心的態度

―――そんなようなものだ。

『アクターズ・スタジオ・インタビュー』を観ると、
このセルフ・エスティームのお手本がテンコ盛りなのだ。
毎回の登場者(俳優・監督ら)は言うに及ばず、
司会者のリプトン氏(彼もひとかどの役者であり演出家である)にしても、
聴衆の学生たちにしても、強くて高いセルフ・エスティームを醸し出している。
それはとりもなおさず、彼らの一人一人が「強く自分でありたい」ということを追求する意志に溢れているからだろう。

ともかく、仕事・働くこと・キャリアをひらくことを考えるにあたって、
この番組はよき刺激材料・よき参考書となるものだ。
だから、私はおおいにこの番組を勧めたい。

ところで、日本ではこのような番組がつくれるだろうか? そして支持されるだろうか?
―――結論から言うと、難しいのかもしれない。
(NHKは「佐野元春のザ・ソングライターズ」という番組でチャレンジしている)

理由は単純だ。多くの視聴者が好まない(=視聴率が取れない)からである。
こうした地味だが噛みごたえのあるインタビュー番組は、観る人を選ぶ。
そうなるとテレビ局はつくりづらい。

確かに働き様や仕事のサクセス物語を扱ったいい番組はちらほらある。
『情熱大陸』(毎日放送)や『ワンステップ』(東京放送)、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』『グラン・ジュテ~私が跳んだ日』『プロジェクトX~挑戦者たち』(以上、NHK)などだ。

しかし、これらは相当に製作側の意図や演出が入り込んでいる。
(シリアスな内容で数値を取るためにかなりの努力をしている。スポンサーも辛抱がいる)
そこまでつくり込まないと多くの人が観てくれないからだ。
いまの日本のテレビで、番組を極力“素”にして、観る側に能動的な咀嚼を求めたなら、
とたんに視聴率は見るも無残な数値に落ちていく。

さて、ここでクエスチョンをひとつ。
フランスのリヨン、日本ならさしずめ博多には何故よいレストラン、旨い店が多いか?

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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