改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。
専門性があるに越したことはないが、なくても首長は務まるのだ。このあたりも企業CEOと同じ感覚である。企業立て直しの本当のプロならば業種業態を問わず問題企業のトップに就任し、矢継ぎ早に改革策を打ち出してV字回復を成し遂げるだろう。そうした人物に必要なのは、視野をできるだけ広く保ち、いつも柔軟な切り口を出せるように常日頃から自分を研ぎ澄ませておく習慣だ。
「改革というからには、1%や2%レベルの改善を求めていてはダメなんです。そんなのは誰でもできる。ちょっと努力をすれば、簡単に実現できてしまうようなものは改革じゃない。本当の改革を引っ張るリーダーは、現状から50%変えるために何をしたらいいのかを考えないと存在意義がない。あえて現実離れした目標を設定することで、発想の枠を広げ、従来の延長線上には決して浮かんでこない斬新な発想をできるわけです」
多面的な視点を磨くために効果的なトレーニングとなるのが、とにかく多くの人の話を聞くことだ。自分を無にして人の話を受け容れ、常にそこから学ぶ姿勢を失わないことだ。
「付け加えるなら大きな流れを見る力を、養うように意識することも重要なポイントかもしれません。私はそのために文明論や歴史論をできるだけ読むように心がけています。といっても普段はなかなかまとまって時間を取れないので、どうしても盆や正月の休みになりますけれど。
首長となるのに、あるいはどんな組織であれ、そのリーダーを目指すときに、自分自身が特に何かのスペシャリストである必要はないのかもしれない。専門家たちを使う立場に徹するのがリーダーである。その代わり大所高所からの視点だけは失わないようにする。
その確かなベースとして数字で事実の押さえをきちんとしておく。具体的でリアルな数字、それも相対数字、絶対数字、経年変化によるトレンドなどを見て、それぞれの数字のエッセンスを自分なりにかみ砕いておく。
現実を一目で理解させる数字を駆使したリーダーシップと、そのリーダーシップをフルに活かした見事な改革。埼玉県のケースは、マネジメントに携わるすべての人に参考になる事例といえるだろう。
~特集インタビュー
「地方活性から日本再生へ 知事の思いは今・埼玉県上田清司知事」完~
『埼玉県 関連リンク』
埼玉県HP:http://www.pref.saitama.lg.jp/
知事の部屋:http://www.pref.saitama.lg.jp/room/index.html
◇インタビュー:竹林篤実 坂口健治◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:大鶴剛志 ◇撮影協力:ピクスタ㈱
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埼玉県知事・上田清司氏
2010.02.05
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