改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。
第1回 「成果を出す。夢を育む」
■「やってます」から「成果を出す」行政へ
「やってます、じゃダメなんです。具体的な成果を出さないと」
上田知事の第一声である。行政の長として、どのようなポリシーをお持ちなのか。その問いに対して返ってきたのは、行政機関の長としてはかなり思い切った言葉だった。
「成果を具体的に挙げることについて、意識が低い。役所の職員は、ことあるごとに課題はすべてきちんと認識していると言う。課題解消のための取り組みも手を尽くしてやっていますと言います。しかし、成果はどうなっているのかと突っ込むと黙ってしまうわけです」
現実を理解していない職員が多いのではないか。これが知事にとって最初の問題意識となった。知事のポリシーは、目に見える形で成果を出すこと。そのためには現状を正しく把握しないことには、何も始まらない。
「例えば埼玉県の納税率はどう推移しているのか。全国的に見れば何番目なのか。就任してすぐにこうした質問を投げかけてみましたが、誰も答えられない。今そこにある事実を把握しないで、改革も何もないでしょう。だから、まず指示を出したのが平成に入ってからの納税率の推移をグラフで出してもらうことでした」
見える化の威力である。グラフを見れば一目瞭然、平成7年ぐらいまでは全国平均とほぼ同じ推移だった県の納税率が、平成8年から著しく異なった動きを見せている。
「グラフを見て初めて、みんなびっくりするんですよ。私が知事になってからはV字回復しましたが、といって具体的に何か特別な指示したわけではないんです。このグラフをみんなに見せて、納税率をせめて全国並みにしようじゃないかとはっぱをかけました。私の任期中には全国平均に並ぶようなプランを考えて実行してくれと。そう言っただけなんです」
元々、県庁には優秀な人材が揃っている。具体的な数字をグラフという誰の目にもはっきりわかる形で見せられると、現状に対する危機感も変わってくるというもの。意識が変われば、行動は変わるのだ。
■埼玉県の夢はなんだろう?
「とにかく具体的に成果を出すことが、私の最大のポリシーなんです。とはいえ成果は何も数字だけに限った話ではありません。人が生きていく上では夢や希望も欠かせませんね。そこで思いついたのが川でした」
おそらくほとんどの人が知らない事実がある。埼玉県は実は川の県なのだ。県内を流れる川の面積と県土の比率でみれば、埼玉は文句なしに全国一である。
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