昨年の衆院選で歴史的勝利をおさめた民主党だが、マニュフェストの実現性、外交手腕、経験不足、総理・小沢代行の金問題など、政治的不透明が拭えない。そのような中、本稿では、マニュフェストのひとつである子ども手当の実現性とその市場効果を分析してみる。
反対に、お金をかけているトップ3は「教育費」「食費」「医療、保険費(単数回答)。 理由(自由回答)はいずれも「大事なことだから切り詰めるべきでない」が7~8割を占め、切り詰めによる悪影響が心配な教育・健康はお金をかけているといえる。 また、教育・食・医療ともに「子供のため」との理由も目立ち、自分の贅沢を控えても子供のための支出は確保する姿も浮かび上がる。
1月11日の産経新聞でも、貯蓄6割、習い事や塾に7割という調査結果だった(複数回答)。子ども手当は「教育費」において、一定の市場効果があると考えられる。しかしこんな分析もある。第一生命経済研究所「子ども手当の経済分析」(PDF)によると、
もしも、子供1人に年額31.2万円の現金支給が行われると、その規模は日本全体でどのくらいになるだろうか。2008年10月の15歳以下人口1,836.7万人で乗じると、年間5.7兆円と、名目GDP比1.2%にも及ぶ。現状での教育関連費の支出規模が、1世帯2.0万円×3,461万世帯=8.3兆円というスケールに比べても、子供手当ての需要創出規模がどれだけ巨大かが推し量られる。
しかし、それが需要創出効果として大規模であっても、中長期的に、生産力の増加に寄与するかどうかについては慎重に考えねばならない。すなわち、教育産業は、若年人口(未成年)が減少を続けている影響で、長期間にわたって市場全体が縮小傾向を余儀なくされているからだ。
市場の成長は、その分野で生産性向上が起こって、供給能力と需要が相乗効果を持って膨張していく必要があるが、子供手当てによってそうしたプロセスがすぐに起こるとは考えにくいからだ。子供手当ては、教育分野が成長市場になるかどうかとは異質の問題のように思える。
選挙期間中いやその前から、子育て関連株価は上昇していた。株価とは偏に未来への期待値である。だから民主党政権への期待の大きさがうかがえた。しかし、選挙熱から冷めた今、政権も株価もすっかりその勢いを落としてしまった。
市場の勢いを戻すには、民主党が「子ども手当」を本気で少子化対策に位置づけ、子育て環境の整備と人口減少問題に取り組むことが必要である。しかし、人口減少に歯止めがかからず少子化が続く限り、今回の「子ども手当」も成長市場という観点では、単なる人気取りのバラマキであり、市場にとって焼け石に水に成りかねない。
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2010.06.04
2010.11.12
株式会社経営教育研究所 代表取締役
教育ビジネスのアナリスト/コンサルタント。専門はフランチャイズ(FC)とデジタル関連。個別指導FCやベンチャーなどの教育機関を経て、2009年に民間教育シンクタンク経営教育研究所を設立。教育と異業種を結ぶエデュイノベーションLLPパートナー。