私たちは餌付けされたサーカスの玉乗り熊ではない。 動機を「外発×利己」に置くことは反応的な働き方であり、ついには反応疲れが出る。 長いキャリアを行く過程で大事なのは「内発×利他」に動機をシフトさせていくことである。
これは言ってみれば、主体的意志的に働こうとする人間は
餌付けされて曲芸をやるサーカスの玉乗り熊ではないということだ。
また、米・コロンビア大学の哲学部教授ジョシュア・ハルバースタムは、
『仕事と幸福、そして、人生について』の中で次のように言う。
「お金はムチと同じで、人を“働かせる”ことならできるが、
“働きたい”と思わせることはできない。
仕事の内容そのものだけが、内なるやる気を呼び覚ます」。
さらに、彼はこう付け加える。
「迷路の中のネズミは、エサに至る道を見つけると、もう他の道を探そうとしなくなる。
このネズミと同じようにただ報酬だけを求めて働いている人は、
自分がしなければならないことだけをする」。
その仕事の意義を顧客につなげよう、チームにつなげよう
社会につなげよう、家族につなげよう
次にもう1つの分類軸について。
利己的動機とは、まず自分の利益を中心に据える動機である。
それに対し、利他的動機は、他者の利益がまず思いの中心にあり、
結果的に自分がうれしいという動機である。
さて、利己的な動機と利他的な動機を比べて、どちらがより望ましいのか。
これについては、
私たちのよく知っているオーソドックスなことわざが簡潔に結論を言ってくれている。
すなわち―――― 「情けは人のためならず」。
(=人にかけた善行は、めぐり巡って自分に帰する)
「利他的であれ」というのは、説教じみて面白くない結論だと思うかもしれない。
しかし、これは理にかなっている。
なぜなら、利他的に行動するためには、まず自分をしっかり持たなければならない。
また全感覚を研ぎ澄ませて他者を受信しなければならない。
そして自らの欲求は他者への願いや祈りへと変わっていく。
すると、その行為を受けた他者から、感謝や支援、協力といったものが集まりだす。
そうして、ますます自分は勇気づけられ、
多少の挫折や困難にも負けていられない自分ができあがる。
そして当初はあいまいだった自分の想いが、具体的な夢や志としての輪郭を描き始める。
さらには個人の夢・志は、共感してくれる他者を巻き込んで、より大きなものに発展していく。
・・・気がつけば、大きな夢・志が叶っていた。
そんな状況が生まれるからだ。
逆に、利己的な動機は、それが強まれば強まるほど自分の世界に閉じこもりがちになる。
そのため、実現過程において他者からの応援などは生じにくい。
(それは例えば次のことを想像してほしい。ここにAとBの二人の人間がいて、
Aは新車のポルシェを買うのが夢で、残業をいとわずケチケチ生活で金を貯めている。
Bは途上国に学校をつくることをライフワークと定め、私財を投じてそこに邁進している。
私たちはこのどちらを応援したいだろうか?)
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【志力格差の時代】
2010.02.01
2010.01.17
2009.12.28
2009.12.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。