改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。
■数字の意味を読んで使い方を考える
「ただし数字には怖い面もあります。使い方を間違うと数字だけが一人歩きして逆効果になることもありますから。交通事故関連の数字は特に注意が必要です」
事故の絶対数は、基本的に人口に比例する。だから東京、神奈川、埼玉、千葉に北海道や大阪、あるいは愛知、福岡といったところが単純な事故数では上位には並ぶことになる。
「埼玉もワースト10の常連ですよ。しかし、交通事故は絶対数だけを見ていると、真の姿は見誤ります。大切なのは人口比で考えることです。事故数だけで見れば全国一少ないのが鳥取県です。だから鳥取が日本一安全なのかというと、そうは一概に言えません。鳥取の人口と埼玉を比べればどうなるかという視点が必要なんです」
鳥取県の交通事故死者数は30人(平成20年を基本とした数値)、しかしこれを人口比に合わせて12倍すると、ざっと360人になる。埼玉の死者数が232人に過ぎないことを踏まえるなら、安全についての見方も変わってくるはずだ。交通事故の死者率では埼玉の方が鳥取よりもうんと低いのだ。
「医師の数についても、よく誤解されるんです。単純に医師の絶対数だけで比べると、肝心の、どれだけ医者に診てもらいやすい環境なのかはわかりません。埼玉なら東京のような大都市がすぐそばにあるわけで、そこには大病院が山ほどあるじゃないですか」
通勤、通学で東京に通う埼玉県民はたくさんいるだろう。その人たちは地元ではなく、利便性の高い都内の病院にかかっている可能性が高い。
「そうした事情まで踏まえた上で、それでも単位面積あたりの埼玉の医者数は全国で6番目に多いんです。埼玉は安心して暮らせるところだと言えませんか」
安心、安全といえば上田知事の就任時、マニフェストに宣言されていた項目の一つだ。
「私が知事になったとき、埼玉県の犯罪検挙率は全国最低だったんです。これを何とかしなければいけない。そこで県警に重要犯罪にしっかり取り組んでくださいとお願いして、一方で民間防犯パトロール隊作りに力を入れました」
防犯においても成果は着実に出ている。犯罪検挙率は約2倍にアップし、当然の結果として犯罪件数は約30%(ピークであるH16とH20の比較では32.7%。知事就任前のH14とH20の比較では31.3%)も減った。知事の肝いりで始まった民間防犯パトロール隊の数は今では東京を抜き、日本一を誇る。
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埼玉県知事・上田清司氏
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