改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。
「といってただ川があるだけじゃ自慢にも何にもならないでしょう。そこでみんなで川の美化に取り組もうじゃないかと呼びかけました。県民全員で県内の川を美しく再生する。まず重点目標となる川をいくつか選び、そこを集中して徹底的にきれいにしようと取り組みました。こういうときは全県でといってぱらぱらやってちゃダメなんです。対象をぎゅっと絞り込んで、そこを徹底的にやる。するとすぐに誰の目にもはっきり見える成果が出ますから」
企業経営でも鉄則の一つとされる選択と集中である。みるみる美しくなっていく川を目のあたりにすれば、県民の意識も自然と変わる。そうなれば当然、次を求める声が出てくるはずだ。
「だからといって、うちでもやってくれという声に無条件で応えたりはしませんよ。今回取り上げたところはすべて、以前から県民の皆さんが環境美化運動に取り組んでこられたところばかりです。つまり自助努力をされているところを、行政はバックアップするんだと。その姿勢をはっきり打ち出すことが必要なんです」
県財政に無尽蔵の予算があるなら話は別だが、現実問題として使えるお金は極めて限られている。お金の使い道としても選択と集中が必要なのだ。
「もちろん行政の仕事は住民の皆さんを支援することです。だからこそ、まずは皆さんに主体的に動いてもらいたい。農業についても、埼玉流のやり方が功を奏しています。この農業離れが激しい時代に新規就農人数が関東で2位です、加えて農業産出額の伸び率も全国5位に付けています」
といってこれも特別にお金を注ぎ込んで特別な施策を打ったわけではない。効いたのは知事の一言だったという。
「県境を越えて長野県に入ったところが川上村です。このあたりは長野県内でも、地理的にもっとも条件の悪いところですね。高速道路のインターチェンジからも、すごく遠い。ところが、この村の人たちの平均年収はざっと2500万ぐらいある。そこを見てきたら、どうですかと。私が言ったのはそれだけです」
ファクトが力を発揮した好例だろう。県境を越えるだけで農地が劇的に変わるはずがない。条件にそれほど違いがないのなら、やり方次第では同じ結果を出せるはずではないか。事実が人々の意識を変え、意識の変化が行動の変化につながったのだ。
⇒次回「数字を使って、文化を変える」へ続く(全四回)
『埼玉県 関連リンク』
埼玉県HP:http://www.pref.saitama.lg.jp/
知事の部屋:http://www.pref.saitama.lg.jp/room/index.html
◇インタビュー:竹林篤実 坂口健治◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:大鶴剛志 ◇撮影協力:ピクスタ㈱
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埼玉県知事・上田清司氏
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