一向に回復基調に乗らない新築住宅業界。車、家電商品に続きエコポイント制度が始まるが、家電商品と同じような政府のバックアップ施策で、本当の回復が生じるのだろうか。
購入側にしても、これまで日本人はあまりに無頓着だった。かつて家づくりといえば、先祖から何代も付き合いのある棟梁の仕事だった。家族構成やライフスタイルに応じた家を提供してきた。しかし、人の流動と地域コミュニケーションの崩壊は確実にそうした人間関係を壊し、単一的な住宅受注プロセスを築いてきた。
住宅展示場のすごさのひとつは、「家は作るもの」から「買うもの」に転換させたことだ。少なくともかつての棟梁たちは、「家を売った」のではなく、「家を作るプロセス(作り上げる技術)」を売っていたはずだし、さらに言えば、そこにある「家」を売るのではなく、「その家に住む暮らし」を売っていたはずだ。リフォームの人気番組「ザビフォア アフター」を見ればわかることだが、住む人が満足するのは、これからの自分たちの暮らしを思い起こすからであり、その家が語るストーリーにある。だからこそどれだけ土地が狭かろうと、不便に見えようと、人はそこに家を建てる。
時代は2010年になった。価値観は変化し、情報は誰にでも手に入れることができる。ダニエル・ピンクが『ハイコンセプト』の中で言うように、「ものがたり」がマーケティングの中で重要な位置を占めるのは間違いない。
もはや大量供給時代は終焉している。ひとりひとりの消費者に対し提供するものは、ハウスメーカーの名前がついた「○○○○の家」ではなく、施主名が入った「○○○○の家」であるべきだろう。
また、家のクオリティが上がるとストック市場が生まれ、リフォームやメンテナンスの市場も活性化するといわれる。実際に、総務庁の資料によると2010年には築30年を越す住宅が日本の持ち家の4割を越すという。そうなれば必然的に流動的なマーケットが生まれてくる。それはますます地域に根ざした将来まで関係を見越したハウスメーカーやビルダーの選択、売買が可能な良質の住宅でなければならないことを意味する。
ひとりひとりの暮らし、ライフスタイルを実現する「家づくり」は、誰もが願うことだ。しかしながら現在のチャネル、マーケティングの仕組みでは、一般の人がそうした家づくりのプロセスに会うことは難しい。どこに存在するかも知らないし、サービスモデル自体も明確ではない。
豊富な人材と全国ネットワークを持つ大手ハウスメーカーが担う役割は大きい。消費者からすればこうした「家づくり」のプロセスが「自分の周り」にあり、気軽に触れることができれば、本質的な顧客ニーズの理解と満足につながり、ひいては市場の活性化にもつながると信じたい。
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