北沢防衛相は、「事業仕分け」で海外調達などによる自衛隊の制服購入費の縮減を求められたことについて、「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」と批判しました。 この発言には、企業で調達をめぐる誤った議論と重なる部分が多くありますので、北沢防衛相の発言を他山の石とするために、その誤りについて、確認していきます。
日本経団連は、2004年「今後の防衛力整備のあり方について」、2009年「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」をまとめ、防衛関係費予算の確保、武器輸出の解禁、防衛産業の育成を訴え、経産省でもこの論旨に沿った政策研究が行われています。
しかし、経団連自らがまとめている通り、「わが国の防衛産業は、「産業」と称しているが一般に大企業の一部門が防衛を手がけているケースが多く、防衛事業の比率は高い企業でも10~20%、中には数%にすぎない企業も多い。」「産業基盤としては規模・体制ともに不十分であると言わざるを得ない。」「このまま細々とした生産を維持するのでは、人員の新規採用も進まず、現在の技術者や現場技能者などの退職に伴い、後継者がいなくなる事態に陥ることは必至である。このような厳しい環境のもと、各社とも人員削減や民生部門へのシフトなどで対応してきたが、これも限界に近づいており、すでに防衛事業から撤退したり、撤退を検討している企業も少なからず出てきている。(出所:経団連 2009年「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」)」という衰退産業です。
防衛以外にも、環境、農業、医療、バイオ、科学技術、モノづくりなど、今後の日本に不可欠と言われている産業は山のようにあります。国も企業も予算が限られている中で、すべての産業に賭ける事はできません。
聖域を設けず、個々の産業の可能性、波及効果を見極め、どの産業を育成し、どの産業では民間、他国の力に頼むかを見極める必要があります。
ベンチャー企業に居るからこそ、行政がどれだけ事業、ベンチャー、産業育成において無力かは身にしみて感じます。企業経営者は、利権構造にすがるのではなく、自力で事業育成に努めるべきです。
■ トップの思いつきが会社を駄目にする
「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」
この短い言葉の中には、これだけ批判に晒されるポイントが含まれています。北沢防衛相は深く考えずにこの発言をしたのではないでしょうか?なぜなら、少し考えれば、ここに挙げたような批判は予想されるので、普通の人間であれば、それらへの反証材料を明らかにし、主張の正当性を用意しておくものです。
今回の北沢防衛相の言葉は、短いのに本当に突っ込み所満載です。そもそも事業仕分けでは、靴下やアンダーシャツ等外から見えない部分までを全て高い日本製にする必要があるのかという点でした。また、自衛隊は軍ではありませんので、北沢防衛相は「軍服」ではなく、「制服」と発言すべきでした。繊細な問題に対する防衛トップの発言としては、不用意なものです
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます