マネジャーが業績を達成するための出発点は、部下の才能を業績に結び付ける一番の方法を見つけ出すこと。 第2弾では、部下との向き合い方の勘所について紹介し、優れたマネジャーはチェスをする真意を考える。
褒めることと認めること
優れたマネジャーの基本スキルの3つめは、褒めることと認めることである。
コーチングを学習した人は、「当たり前」だと思うだろうか?
研修やインタビューで現場のマネジャーに話を聴くと、「褒めることは良いことなのだろうが、心理的な抵抗があって実践できない」という意見が多い。
「部下を褒めてばかりいると甘やかすことになる」
「自分は褒めることが苦手」
「厳しく叱ることが部下のためになると思っている」
「褒めるとしらじらしくなる」
理由はさまざまだ。
実際に、あるシンクタンクのマネジャー研修で、部下の良いところを褒める練習をしたところ、まったくコミュニケーションが取れなくて思考停止状態に陥り、固まってしまった人が何人もいた。
「褒めるところがみつからない」
「なんて言っていいかわからない」
本当に思いつかないし、言葉がみつからないのだ。
対照的に、優れたマネジャーは褒めること(賞賛)が本質的に持つ力についてわかっている。
賞賛は、過去のすばらしい成果に与えるだけのものではなく、未来のすばらしい成果の原因にもなることを直感的に知っているのだ。
つまるところ、芝居を作るのは観客だと悟っている。
褒めることは創造的な行為なので、褒めすぎを心配する必要はまったくない。
成果がそれにふさわしいものである限り、褒めすぎることはないし、それがしらじらしく聞こえることもない。
すばらしい成果は、たいていその場限りのものではなく、実践と改善を積み重ねた結果である。
褒めるというのは、こうした部下の努力に気づき、それを祝福することだ。
そうすれば、部下はますますその努力をするようになり、卓越した業績に近づくことになる。
部下に気づかいを示すこと
優れたマネジャーの基本スキルの4つめは、「部下に気づかいを示すこと」である。
多数の調査研究によると、部下の生産性が上がるのは、自分を気にかけてくれる人が職場にいると感じたときだ。
逆に、上司に気にかけてもらえず、職場の他の人のフォローもなく「放って置かれる」と、社員が会社を辞めたいという思いが加速する。
このような状態に置かれている若手社員は驚くほど多い。
上司から気にかけてもらっていると思う従業員ほど、欠勤や業務上の事故、労災の申請が少なく、コンプライアンス上のリスクが少ないという。
友人や家族に対しても会社の肩を持つことが多いことも明らかになっている。
マズローの欲求5段階説において、生理的欲求、安全欲求の次は所属(親和欲求)である。
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2007.09.11
2007.09.20
増田 崇行
株式会社クエストコンサルティング 代表取締役
2006年5月に株式会社クエストコンサルティングを設立しました。 組織人事領域におけるプロデューサーとして、クリエーターとのコラボレーションによりユニークなサービス、ビジネスを開花させてきました。今後も「Quest for the Human Brightness」をコンセプトとして、インパクトのあるサービスを開発しご提供することで、人と組織の本質的価値の向上に貢献できたらと考えています。