学習塾の料金値下げ、顧客にとっていいことばかりでもない。

2009.11.09

ライフ・ソーシャル

学習塾の料金値下げ、顧客にとっていいことばかりでもない。

寺西 隆行
(株)Z会

不況と競争の激化により、教育業界…中でも学習塾の大幅値下げが目立つようになってきました。 安い料金でサービスを受けられることは良いことですが、安さには必ず安くできる根拠があります。 根拠を見落とすと、最終的に後悔するのは、顧客自身です。

◆本投稿記事は、毎日更新中のZ会ブログ
http://www.zkaiblog.com/histaff/
の話題を元に、本サイトの読者層に合わせた形で修正しております。

学習塾の値下げ競争が激しくなっているようですね。

学習塾が大幅料金値下げ 不況と「塾離れ」に対応(J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2009/11/07053296.html

値決めについては各塾の方針がありますので、「あの塾の値段の高さはちょっとぼったくりすぎだろう」とか「ダンピング競争は塾業界の体力を落とすだけ」とか、どちらの気持ちもありません。
各塾の自由です。

その自由に決めた値段をお客様が選ぶかどうか。
それだけの問題ですよね。

ただ、選ぶお客様に気にして欲しい点がいろいろあります。

◆塾で提供するサービスは、大量生産による画一的な汎用品ではなく「人が提供するサービス」が料金のほとんどを占めますので、企業努力によるコスト削減ではなく、単に人件費を削減することで低価格を実現する場合が多いこと

一般に、商品・サービスが「値下げ」できるようになるには、コストの削減が何らか寄与しなければいけません。
たとえばスーパーの商品では、プライベートブランドによる物流・パッケージ部分のコスト削減、原材料の値下げ、商品の在庫管理の向上…などが上げられますね。

しかし塾で提供しているサービスのコストは、「教える」というサービスそのものに必要な人件費の割合がかなり高いのです。
※他、地代家賃などもバカになりませんが(駅近くの塾が多いので)。
したがって、値下げするときは、その分だけ人件費を削っている場合が少なからずあります。

ここまでくればお分かりですよね。
値段が下がるということは、その値段で雇用できるだけの講師の能力ということであり、塾を選ぶ方からすれば、下がる前の価格での「教え方」の質やサービスの提供の仕方を過剰に期待してはいけない、ということです。

もちろん、講師の「教え方」の質が下がり、サービスの提供の仕方が変わる~個別性が薄れる場合が多いのですが~といっても、それで志望校に合格できるだけの実力をつけてもらえる教育サービス、と思えれば問題ないわけです。

たとえば、人件費を下げる工夫!?として、「プロ講師ではなく大学生講師にする」という発想もありますが、このときに「教え方そのもの」の質は押しなべて低下しますが、教えられる生徒側との年齢の近さにより、お互いの「コミュニケーション」から誘発される生徒の学力向上やモチベーションアップが新たに生まれ、前者の低下分を補うだけの効果が教えられる側にあれば、何ら問題はないわけで。

次のページ値段が下がるからと言って汎用品と同じように素直に喜び、...

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寺西 隆行

寺西 隆行

(株)Z会

文部科学省広報戦略アドバイザー 経済産業省「未来の教室」教育・広報アドバイザー 三島市GIGAスクール推進アドバイザー 等

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