~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
すると、町中の家という家の窓から黒い旗のようなものが突き出さ
れているのが目に入った。
< 何やろ? 不気味な旗やな・・・ >
「永井さん。あの黒い布のようなものは何ですか?」
「あー。あれはアシュラという宗教行事の際に家の軒先に飾る旗な
んだよ。 今がちょうどその行事の期間だ」
< アシュラ??? >
永井店長は続けた。
「アシュラというのは、イスラム教に出てくる暴力や戦争の神様の
名前なんだ。
年に一度、アシュラがこの世に現れて街中で暴れるそうで、その
神様が暴れないようにという祈りをあの旗にこめて窓から掲揚し
ていると聞いている」
< えー、 それって日本の阿修羅と似てるな~ >
宮田は、日本の神様である阿修羅を思い出していた。
阿修羅も確か戦争の神様ではなかったか。
イスラムのアシュラと日本の阿修羅。
どちらも同じような発音で同じような意味を持っている。
意外なところで日本とイランは結びついているのだということを
知った宮田は、昨日ムハンマド部長が会議の閉めの言葉として言っ
ていた日本とイランの良好な関係というのは、確かに結構奥深いも
のだと感じていた。
「ウワーーーン。ウワーーーン!」
< な、なんや!? 何事や!? >
突然どこからともなくけたたましいサイレンの音が響き渡った。
のんびりとゴルフを楽しみながらフェアウェーを歩いていた宮田と
永井支店長はびっくりした。
永井支店長が叫んだ。
「こ、これは空襲警報だ! 宮田君。やばいぞ。すぐ隠れよう!」
< す、すぐ隠れるっちゅうても、どこに隠れんねんな!?
隠れるようなとこ、どこにもあらへんがな! >
最新鋭のイラク空軍戦闘機の襲来を知らしめる空襲警報がテヘラン
市内一帯に鳴り響いたのだった。
宮田と永井支店長は、取り急ぎ、すぐ近くにあるバンカーに転がり
込んで、じっと伏せてイラクとの国境がある西の空を見つめていた。
ただ、そのバンカーが、また浅い。
そんなバンカーに入ったところで、もし戦闘機が来たら何の防御に
もならないなと宮田は思っていた。
空襲警報は5分ほど鳴り続けたが、結局何も起こらなかった。
不思議なことに空襲警報が鳴っている間、イラン人のキャディーた
ちは何事も無いかのように談笑しながらフェアウェーを歩いていた
のだった。
< なんでやねんな??? あの連中は・・・。
怖わないのかいな? >
バンカーから這い出た宮田はキャディーに尋ねた。
「なぜ君たちは空襲警報が鳴っているのに平然としているのか?
怖くないのかい?」
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商社マン しんちゃん。 走る!
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