非常事態時のリーダー

2007.08.24

経営・マネジメント

非常事態時のリーダー

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

先日(07年08月20日)に 那覇空港で発生した、中華航空機の炎上事故。 乗員乗客165人全員が無事避難できたことから 「奇跡の脱出劇」 などと言われていますね。 一歩間違えば、 多数の死者が出た大惨事になっていたところでした。

さて、今回の脱出がうまくいった理由として

「90秒ルール」

が挙げられていたのを
お聞きになった方もいらっしゃるでしょう。

これは、アメリカ連邦航空局が制定した規則です。
具体的には、

「緊急時に乗客乗員全員が、
 航空機のすべての脱出口のうちの半分を使用して
 90秒以内に脱出が可能でなければならない」

というもの。

そして、航空機の非常口の数や位置は、
この90秒ルールが守られるように設計されている
というわけです。

炎上した中華航空機からの実際の脱出時間は、
1分とも2分とも言われていますが、ともあれ、
極めて短時間に、脱出が完了したことには違いありません。

さて、こうした非常事態時にもうひとつ重要なのが、
適切な指示を出せるリーダー(あるいはガイド役)の存在です。

中華航空機の場合、機長や客室乗務員の的確な誘導・指示が
あったと報道されていますね。(ただし、この点については、
乗客の話との食い違いが指摘されていますが)

人や車などが引き起こす

「渋滞」

について横断的な研究成果をまとめた本、

『渋滞学』(西成活裕著、新潮社)

には、建物内で火災が発生した場合に、

「どの方向に逃げるか」

を聞いたアンケート結果が紹介されています。

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1位:放送や指示に従う(47%)

2位:煙の危険から遠ざかる方向(26%)
3位:非常口や階段の方向(17%)
4位:他の人の逃げる方向についていく(3%)
4位(同率):人の空いている方向にいく(3%)

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ほぼ2人に1人が、

「放送や指示に従う」

と回答している点が興味深いですね。

同書では、

パニックになると人間は的確な判断ができなくなり
他人に追従する傾向が強くなること

を示し、だからこそ、

リーダー(ガイド役)の的確な「指示」の有無が、
危険から安全に逃げられるかどうかの鍵を握っていること

を強調しています。

話が飛躍するようですが、
企業が直面するさまざまな危機発生時において、
リーダー自身が右往左往してしまい、
的確な指示を出せなかったらどうなるでしょうか?

言うまでもなく、危機から無事脱出できる可能性は
限りなく低くなりますよね・・・

*「渋滞学」は、やや高度な内容ではありますが、
 切り口が実に面白い良書ですよ。
 聞きなれない専門用語・学術用語が頻出しますが、
 文章自体は平易に書かれています。

『渋滞学』(西成活裕著、新潮社)

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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