『LEON』『zino』など数々の人気雑誌を創刊してきた岸田一郎氏が、動画サイト「LUXURY TV」をスタートした。「Web動画には可能性がある」「ちょいワル、モテは封印」と語るその真意とは。[吉岡綾乃,Business Media 誠]
岸田 紙はコストがつらいでしょう。しかも売れなかったら、回収して断裁までやるわけです。コスト的にもそうだし、こんな時代に「それってエコなの?」という思いもある。
時間もそう。雑誌を作るには、編集者がまとめた原稿をデザイナーがレイアウトをするまで待って、それを2回校正して、印刷所に送って待って……とものすごく時間がかかる。
でも、取材をして、パパッと編集して、翌日には載せられるということになれば、とても効率がいい。うちの編集部は今4人いるけど、内部で動画編集をしている。一部外注も使っているけど、とても小回りが利くし、速いですよ。
今は総合誌が売れない時代で、クラスマガジン化が進んでますね。あるコンテンツが、Aさんにはすごく刺さるけど、Bさんにはまったく刺さらない。でも、そういう動画コンテンツはテレビにはなじまない。ラグジュアリーな情報を、日本全国あまねくおじいちゃんやおばあちゃんが観たいかっていったら、そんなことはないわけです。だからうちがやっているような動画は、Webで配信しよう、オンデマンドで、ということになる。Webはクラスマガジン的なものが作りやすい状況になってきている。
――ラグジュアリーなファッション誌だから、ということでしょうか。
岸田 出版社は印刷所ではない。コンテンツメーカーなんです。大事なのは、コンテンツ収集能力なのだから、それを紙じゃなくて他の方法で出していこうとするのは自然なことだと思う。
雑誌だけじゃないでしょう。もっというと、新聞社だって同じじゃないかな? 新聞社の強みというのは、例えば記者クラブに入れるという利権だったり、記者を抱えていて取材力があったり、ということなわけで、今のあの紙の新聞という体裁が大切なわけじゃない。これからどういう形でコンテンツを出していったらいいか、それを見つけた会社が生き残れるんだと考えている。
Webにはまだ圧倒的に面白いコンテンツが足りない
――とはいえ、Web媒体は基本的に「無料で読むもの」であるだけに、読者が雑誌代として支払うお金に頼れないこともあって、マネタイズが難しいですよね。
岸田 でも、今Webで読めるものって、ニュースがほとんどでしょう。圧倒的に面白いコンテンツを提供できるなら、Web媒体でも有料化は可能だと思う。例えば、人気作家が小説を書きました。でもWebでしか出しません、本は刷りません、ということになったら、皆お金を払うんじゃないか。
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