金融不況をきっかけに大きく変化した消費者の意識。今何が必要とされ、何が必要とされていないのか。東急ハンズやAZスーパーなど、販売の現場の動きから分析する。[郷好文,Business Media 誠]
2008年9月15日のリーマンショックから10カ月。景気は回復しつつあるように思えるが、消費者の間では“不穏な動き”が広がっている。
米国では巨大金融機関の整理・救済処理が進み、株式市場も落ち着きを取り戻しつつある。不況の象徴であったGMの破産手続きも終了。といっても、復活のノロシが古き良き時代のアメ車のアイコン「新型シボレー・カマロ」発売という時代錯誤さにはびっくりしたが。“エコ”も“CHANGE”もカケラもない。米国って天真らんまんな国なんだなぁ。
振り返ってニッポンはどうか。「株式市場は二番底を打ち、政権交替特需で相場上昇!」と筆者はにらんでいる。でも収入は下がる一方、将来への不安は増幅。ウワベは回復基調でも、消費者心理はどうもまっすぐ回復に向かっていない。ねじれて“不気味な動き”が広がっていると思うのは私だけだろうか。
それをひと言で言えば“消費ダダイズム”。これまでの消費の形が破壊されているのだ。
消費ダダイズムが広がっている?
ダダイズムとは第一次世界大戦後の空虚な厭世(えんせい)気分を背景にした、既成の秩序や常識に対する否定・攻撃・破壊思想のこと。「これまでのやり方をひっくり返せ」という反芸術運動、不況が格差を生み不安感が広がった当時の世相を反映する運動だった。
リーマンショック後、単に消費はしぼんだだけでなく、買い方が一変した。「容赦ない低価格要求」「こだわりよさらば、ベーシックよこんにちは」「ブランドって何だっけ?」。これまで信じられていた商品価値や企業価値がすっかり否定されてしまったのだ。これはまさにダダイズムではないだろうか。
消費ダダイズムの第一攻撃目標は、コンビニエンスストア。
24時間営業・街角立地・高商品鮮度の高回転率商売。そんな業態価値が支持されてきたコンビニは市場の飽和・店舗過剰を背景に成長が鈍化、そこにリーマンショックで追い打ちがかかった。タスポ効果が追い風になったものの、コンビニ大手4社の2010年2月期の合計閉店数は全店舗数の5%にのぼる。
“コンビニ=便利=でも高価格”というビジネスモデル自体が疑問視されている。もはやどのコンビニでも値引きはありだ。全国統一の品ぞろえも疑問符で、地域別の仕入れが増えている。2週間で入れ替える話題先行の新製品も厳しい。調味料だけ変えるような小手先の工夫は消費者に見透かされてしまう。さらに弁当廃棄の問題でも、エコに悪いコンビニという負のイメージを背負ってしまった。
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