『一徹理視』~3年ジョブローテーション再考

2009.06.22

組織・人材

『一徹理視』~3年ジョブローテーション再考

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

3年程度で仕事をぐるぐる経験させていくことが育成上、本当にいいことなのか。一つの仕事分野に10年超関わることで得られる深い世界もまた存在する。「一つを徹すれば、理(ことわり)が視えてくる」。

* * * * *

能力開発・キャリア形成における時間レンジのとらえ方はいろいろあるだろうが、
私は、3年・5年・7年・10年に重要な区切りがあると感じている。
3年は、その分野の「基本習得」に必要な期間。
5年は、その分野の「深耕」に必要な期間。
7年は、その分野に「根を張るため」に要する期間。
そして10年は、その分野の「プロフェッショナルとして自立・自律するため」に要する期間。

私も、茂木会長の持論に賛同する。
短期間で行うジョブローテーション制度により、
言ってみれば「一畑三年」で、次々に異なる部署に動かされるのでは、
基本が身に付きはするものの、深耕や根を張るところまではいかない。
(この深耕や根を張るところでの負荷が、実は、人間を成長させる機会ともなる)
ましてや、プロフェッショナルにはいつまでもなりきれない。
仮に、そうした中で、うまく仕事をやりこなしていく人間がいたとしても、
それは、やはり「組織内ジェネラリスト」「組織内エキスパート」の域を出ない。

したがって、もし、組織が本当に骨のあるプロフェッショナルを育てようとすれば、
人財育成において、10年レンジでのとらえ方が見直されるべきだ。
20代から30代にかけて
「一畑十年×2ラウンド」―――という茂木会長の発想は、傾聴に値する。

しかし、3年ほどでローテーションさせる制度にはメリットがあるのも確かである。
だが、最近、人事の方々とこの話をすると、

・ジョブローテーションの制度を謳わないと、新卒募集の人気に悪い影響が出る
・本当にミスマッチ配属なのか、本人の適応力のなさ・短気なのかは判別できないが、
 モチベーションをなくした社員に対してローテーションは一つの刺激剤にはなる
・実際、3年を待たず、職場をかわりたがる社員が増加している

など、ローテーション制度が、本来もっていたポジティブ要因ではなく、
ネガティブ要因によって支持される傾向が強まっているようにも思える。

* * * * *

私は、仕事上でいろいろなキャリアの姿を研究してきて、
そしてまた、ビジネス雑誌記者時代から幾百もの第一級の仕事人を観察してきて、
あるいは、自分自身が、
メディアの世界で情報編集畑の仕事を10年、教育畑の仕事を10年やってきて、
思い浮かんでくる言葉(造語)がある。
それは―――

『一徹理視』


一つを徹すれば、理(ことわり)を視(み)る

つまり、一つのことを徹していけば、
全体に貫通する筋道・法則のようなものが視えてくる、ということ。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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