低価格路線をひた走るロッテリアがさらに大幅値下げを敢行。その行き着く先には何があるのか。また、ミスタードーナツの新商品の意味するものは何なのか。
ミスタードーナツは原料の小麦粉の高騰以来、実質的な値上げである量目調整によって商品自体がずいぶんと小さくなった。ファンには不評が広がった。しかし、世の外食業界・ファストフード業界は低価格路線をひた走る。さりとて、実質値上げをする状態のミスドは値下げは厳しい。そこで、高付加価値商品を投入することとなる。
鳴り物入りで投入されたのが、モスバーガーとのコラボレーション商品の「ドーナツバーガー」。168円と比較的高単価商品であり、期待がかかっていたはずだが、登場時以来、あまり話題に上っていない。売上げも推して知るべしではないだろうか。
コラボレーションはモスとミスドが各々の顧客を送客する狙いがあったと思われるが、イマイチうまくいかなかったのではないだろうか。
そこで、ミスドは次の一手として展開したのが「イートイン」だ。
ミスドにはもう一つ、「大人のミスド」というポジショニングを持った「アンドナンド」という店舗展開をしている。クリスピー・クリーム・ドーナツをはじめとした黒船ドーナツが上陸した時期に、自社もプレミアムドーナツを展開するために起こしたブランドだ。2007年のことである。
明らかに高単価商品がラインナップされており、ドーナツは180円~250円中心。高付加価値・高単価展開を狙い、スタート時には「年内に都内周辺で6店舗出店し、今後全国でフランチャイズ展開も視野に」と強気のコメントも発表していた。しかし、現在も、渋谷・神保町・汐留の3店舗のみと苦戦が鮮明だ。
そのアンドナンドの最も特徴的な商品は「イートインメニュー」であろう。ホイップクリームを載せた暖かいドーナツにエスプレッソやラズベリーソースをかけて食べるスタイル。400円の高単価商品だ。価格的には今回の「デコド」とは倍以上の開きがあるが、スタイルは共通している。
低価格大衆路線のミスドがプレミアム路線のアンドナンドと同じスタイルを展開するのは価値の毀損になる。しかし、アンドナンドもイマイチうまくいっておらず、店舗展開も進んでいないため判断を下したのではないだろうか。
ロッテリアがどこまでフォロアーのポジションをガマンするのか。
ミスタードーナツのプレミアムブランドを犠牲にしてまで展開する高単価商品の投入策がうまくいくのか。
戦略に絶対の正解はないけれど、立ち止まれば必ず沈んでいく動きの速い業界、変化の激しい時代おける必死の策であることは間違いない。成否を見守りたい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。