ユニクロを傘下に持つファーストリテイリング社の「g.u.(ジーユー)」ブランドの戦略が加速している。その影で主力のユニクロを同社はどう動かすのか。
「ケタ違い宣言」であるという。
今年3月に「ジーユー新価格宣言」として象徴的に990円ジーンズを掲げて、従来の価格戦略からさらなる低価格に舵を切ったジーユー。旧価格はユニクロの3分の2程度。正直中途半端が否めなかった。故に、伸び悩んだ。前回の発表では、全商品の8割をユニクロの半額以下にすると宣言した。
そして、今回の「ケタ違い」である。6月2日の発表会の目玉は、990円の半額以下の490円のプリントTシャツ、990円2WAYチュニック、カーゴパンツ、ガールズジーンズなど。全商品の半分が990円以下。「家族4人が1万円以下でトータルコーディネートできる」といい、さらに低価格を強化したのが明確だ。
低価格路線強化の一つの理由は、外資のファストファッションブランドが次々と上陸してくるのを迎え撃つことだろう。原宿に大行列を作ったフォエバー21も「全身コーディネートで1万円」が売りの一つであるが、ジーユーのは価格はやはりそれと比べても「ケタ違い」である。
しかし、ジーユーの今後の展開で見逃せないのが、多店舗展開化をさらに加速させようとしている点だ。<2013年8月期に売上高500億円、日本全国200店舗体制を目指す>。という。
(Fashionsnap.com http://www.fashionsnap.com/news/2009/06/gu-990yen.html )
ユニクロの2月末における国内店舗数は766店。それに比べればまだ少ないが、ジーユーの同時期の店舗数が57店であったことを考えればいかに急拡大であることがわかるだろう。
これは、ファーストリテイリングのグループ戦略である。3月に行われたジーユーの戦略説明会で柳井社長が明言している。
「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と。
ファーストリテイリングの戦略を読み解くには、「バリューライン」を意識するとわかりやすい。「価格」と「価値」が正比例する関係を「バリューライン」という。価格が低く、価値も低いから、価格が高く価値も高いという比例関係。市場の相場はだいたいそのライン上に形成される。故に、それを下回れば商品は売れない。上回ることができればヒットが見込まれる。
ユニクロはかつて、「最安値宣言」をしていた。同社の戦略の大きな転換点である、98年11月の原宿出店以前のことだ。「最低価格で品質保証・返品自由」が売りで、「これもこれも、返品してええのん?」とレジで服を次々脱いでいく大阪のオバチャンの強烈なCMを覚えている方もいるだろう。つまり、最低価格で高品質の「スーパーバリュー戦略」を打ち出したのだ。
しかし、バリューラインから大きく飛び出るそのポジションを取るのは容易なことではない。同社は最低価格を保証しないものの最高品質を目指す「高価値戦略」に転換した。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。