インターネットを活用し低価格で生命保険を提供するライフネット生命保険。既存生保に対する問題意識から生まれた同社は、ネット専業の保険会社として幾多の障害を乗り越えて事業開始に至っている。規制にがっちりと守られてきた保険業界に風穴を開けた同社の誕生秘話を探る。
「自分が買う商品の内容を事前に知ることができないなんて当たり前に考えればまったく変です。しかも、その買い物は人の生涯の中では家に次ぐような高額商品なのです。だから私たちは、約款をホームページで公開することにしました」
ライフネット流の当たり前は、ほかにもいくつかある。例えば、人が家を買うときにはどうするか。カタログを取り寄せ、実際にモデルハウスを訪れ、候補を絞り込んだ上で徹底的に比較し決断するはずだ。ところが生命保険の世界では、商品を比較することもできなかったのだ。
「典型的な一社専属制の弊害です。日本の保険業界では、A社の商品を扱っている専属代理店、セールスパーソンがB社の商品を売ることはできません。だからお客様に商品を比較されては都合が悪いのです。そこでさまざまな特約を付けて商品を複雑にし、しかも約款を渡さないことで商品を比較できないようにする仕組みができ上がっていました」
今どき、ほぼありとあらゆる商品はネット上で比較できるのが当たり前である。なのに保険だけはできない。このイレギュラーな状態にもライフネット社は『当たり前』の感覚で風穴を開けた。
ライフネット社のウェブサイトには『他社商品と比較する』というボタンが設置されていて、そのボタンを押すと生命保険のポータルサイトである「保険市場」に遷移し、他社商品と保険料の比較ができるようになっている。また、約款をウェブサイト上で公開し、さらに付加保険料も公開に踏み切るなど、今までの生命保険業界では考えられたかった事が当たり前のように実行されている。
「消費者目線の当たり前感覚を徹底したから、当社のコンタクトセンターは電話での受付を夜の10時(平日)までとしています。平日、普通に会社勤めをしている人が、夕方の5時までに落ち着いて電話をできるわけがありませんから。あるいは我が社には定年もありません。人口が減るということは、働き手も減っているわけです。歳を取っても健康で働ける人はいくらでもいます。それなのに定年があることの方がおかしいでしょう」
出口氏の『当たり前』とは、徹底してラジカルである。それ故規制によって保護されてきた保険業界にとって、その行動は宇宙人的とも思えたはず。出口氏に対する風当たりは、熾烈を極めたのではないだろうか。
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FMO第23弾【ライフネット生命保険株式会社】
2009.05.26
2009.05.19
2009.05.12
2009.04.28