平成20年度版「自殺対策白書」によると、平成19年度の自殺者は、3万3093人。これで、11年連続の、3万人超え。この状況を、「不可視の内戦」のようなものだと言ったのは、作家の辺見庸さんである。見えないところで、日本には、内戦を超える戦いが繰り広げられている。
そんな若い女性達に、私達・大人は、胸を張って「あきらめるな」と説教できるのだろうか。女性作家の鷺沢萠さんは、著書「ありがとう」に、こんなコトバを遺して自殺している。
『「あきらめない」ことは、さして難しいことではない。さして難しくないことをするときに、殊更に胸を張って、声高に主張する必要はない。世の中にはどうやってもあきらめる他ないことがたくさんある。山ほどある。厭になるくらいある。そうしたことごとの瓦礫の山の上に途方に暮れて立ち尽くしながら、血をしたたらせて「あきらめた」経験が一度でもあれば、「あきらめない」をただキレイなことばとして受けとめることもないはずだ。
「あきらめるな」は他人に向かって言うことばではない。
自分に向かって、黙ったまま言うことばだ』
この日本に、「あきらめるな」と自分に向かって、黙ったまま問い続けているオッサンは、どれだけいるのだろうか。「あきらめるな」「信じろ」と文句なしに美しいことは言うぱかりで、現実に目を背けている大人が、この世には、多すぎる。
自殺大国・日本の、その大きな分母になっている「自殺未遂」の病巣は、「あきらめるな」と言うばかりの大人達が創った退屈な社会にある。大人達が、こころの中で「あきらめるなという内戦」を本当に潜り抜けてきたかどうか・・・その後悔と後ろめたさにある。
自殺者数ではなく、自殺未遂者数に正面から向き合わない大人の機関の脆弱さが、自殺大国・日本の本質的問題である。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。