古くからいる抵抗勢力のクビを切りたい

2009.03.03

組織・人材

古くからいる抵抗勢力のクビを切りたい

小倉 広

中小企業にとって社長交代は、事業が継続できるか、廃業を余儀なくされるかの分岐点。5年で9割が潰れる「創業という嵐」を乗り切った創業社長…。そんなカリスマから舵取りを任される二代目には困難がつきまといます。二代目社長がつくるべき会社とは?

「クビにするしか無いと思ってます」

社長は深刻な表情で切り出しました。

父親から会社を引き継いで三年。社長自ら先陣を切って改革を進めた結果、
若手が輝き組織が活性化してきたといいます。

その一方で、古き時代を支えてきた古参社員が抵抗勢力と化し、若手を抑え
つける弊害が起きているというのです。

「古参社員があって今がある。感謝の気持ちは表してきた。でも、もう限界だ。
 泣いて馬謖を切るしか無いのです」

噛みしめるように語る社長。その気持ちは同じ経営者として痛い程わかる。
でも、本当にそれでいいのか…。

「他に方法は無いのでしょうか?」

私の問いに、社長はこう答えました。

「無いでしょう…。リスクは承知の上。組織は動揺し恐怖を感じるはずです。
 しかし、他の方法が思いつかないのです」

私は視点を変えてもらうためにメタファーを用いて話してみることにしました。

「社長は、ケガをした時にカサブタができたことはありますか?」

キョトンとした顔で社長は答えます。

「カサブタ?もちろん何度もあります」

「社長はそれを自分で剥がしますか?それとも自然に剥がれるのを待ちますか?」

私の言葉にピンと来たのでしょう。社長は、ゆっくりと考えた後に答えました。

「カサブタは剥がしちゃ駄目なんですね」

組織変革に抵抗勢力はつきもの。

彼らはカサブタのように新しい皮膚=若き次世代リーダーたちに覆いかぶさります。
そんな時、多くの経営者は新しい皮膚の発露を急いでカサブタを剥がそうとします。

しかし、その先にあるのは手痛い出血。
新しい皮膚=若手もカサブタと共に失ってしまいます。
 
抵抗勢力は会社を去る時に様々な毒を撒き散らします。
それはクビという屈辱的な行為に対する抵抗と反発です。
退職という道を選んだのではなく、強制的に辞めさせられた自らを正当化する
ために、会社を悪者にするのです。

この毒に染まりやすいのが会社にとって大切な若手たち。
純心で影響を受けやすい彼らは、例え事実無根の噂であっても、それを信じて
会社に不信感を抱く…。そして最悪の場合、抵抗勢力と同調して会社を去って
しまうのです。

「社長がすべきは、新しい皮膚の成長を促すこと。心配は無用です。下から
 新しい皮膚が生まれてくれば、カサブタは放っておいても自然にはげ落ち
 ますから」

これこそが本来あるべき組織の新陳代謝の姿。
無駄な血を一切流すこと無く、新しい皮膚が堂々と表に出てくるのです。

社長はウン、ウン、と何度もうなずきながら語りました。

「カサブタを剥がすと新しい皮膚まで剥がれるか…。
 私はとんでもない間違いを犯すところだった」

新しい世代が活躍する未来を急ぐあまり、誤った判断を下しかけていた社長。
そんな惑いから、ようやく開放され、待つことを選択した瞬間でした。

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